ポール・スミス(Paul Smith)の2016年秋冬ウィメンズコレクションは、デザイナーポール・スミスのルーツを再発見し、70年代~80年代に自らがデザインしたスタイルを再解釈。彼自身が考える“ハンサムウーマン”の概念を改めて披露した。
日常にあるごく普通のものに、手の込んだデコレーションやサプライズを加えて新しいものに作り変えるというのは、昔からブランドの根底にあるコンセプト。今シーズンの中で重要な意味を成したキッチュなかじりかけのリンゴは、1982年に発表したクラシックなフォトグラフィックへのオマージュであり、遊び心を加えて新しいものを生み出すポール・スミスらしさの象徴だ。さまざまなスケールのプリント、刺繍、アップリケなどの装飾として繰り返し登場している。その一方で、淡くサイケデリックに描かれたフラワーとペイズリー柄は華やかにファブリックへ。
テーラリングには、メンズコレクションと同じくストライプが織り込まれた。ボトムスは、ポール・スミス自身のワードローブの中から見つけた、クラシックなトラウザーがベース。また、丈を長くエレガントなシルエットに昇華させた新たなスタイルも提案された。フォーマルなコートはラグランスリーブの丸みを帯びたシルエットが特徴的で、シアリングのディテールが素材の美しさを引き立てる。細身のシフトドレスには、印象的なカラーや繊細な刺繍、ペイズリーモチーフがあしらわれている。
アクセサリーにもアップリケを落とし込み、スカーフやバッグにはフローラルパターンを配した。ゴールドメタルのジュエリーや半貴石のシルバージュエリーをフルーツのかたちでポップに表現し、愛らしい女性らしさも演出している。
これらのインスピレーション源のひとつとして、妻であるポーリーン・デニア・スミスのワードローブも挙げられている今季。メンズから派生したウィメンズコレクションらしく、初期のデザイン手法やトレードマークなどを取り入れ、威厳に満ち洗練された女性像を描いた。