スナオクワハラ(SUNAOKUWAHARA)が2016-17年秋冬コレクションを発表。
身体が包み込まれた時、温かい気持ちになれるスナオクワハラの洋服。なぜなら、そこにはデザイナー桑原直が現在にわたるまで手掛けてきた、ものづくりへのこだわりや強い想いが詰まっているから……。リスタート2回目となる今シーズンは、そんな彼の想いとは裏腹に、アンニュイな雰囲気が漂う。
一際目を惹くのが、ヨーロッパのインテリアファブリックからインスピレーション得て作られたアンティーク調のテキスタイル。麻を交えた凹凸のある素材に色を塗り重ねた捺染によるもので、着古したような風合いと素朴な質感が、懐かしさとやさしさを感じさせる。独特の毛羽立ちがある英国ウールもまた然り。ふんわりとした柔らかさだけでなく、ナチュラルだからこそできる個性が穏やかに馴染んでいく。
そういった一癖あるファブリックを、ドッキングしているのは今季の特徴だろう。厚手のウールコートのディテールにシャツ地、丸のモチーフが重なり合うシアーな素材にもこもこのニットといった具合に表現している。
また、タックやギャザーを巧みに用いたフェミニンなフォルムに、遊びを加えたのはディテール。例えば、ブロックチェックのようなブルーのシャツは、全てパターンを切り替えたパネル構造になっているし、爽やかなワンピースは、大きな立体感のあるポケットをあしらっている。さらに言えば、ポケットに採用した柄は、メンズライクに見えがちなピンストライプをアレンジして、ドット風にしたものだ。
言葉にすれば見えてくる桑原のこだわり。彼のものづくりは、未来をイメージすることから始まり、その中に今まで積み重ねてきたことを組み合わせて完成させるという。長い月日を経て、出来上がった服はやがて私たち着る者のぬくもりとなるだけでなく、喜びや思い出となっていく。こんな当たり前のようで、不思議なこと。それを考えさせられた今季のテーマは「未来の記憶」。桑原のこだわりは手に取る人に蘇る。