喰種に対抗するCCG本局所属の上等捜査官・真戸呉緒を演じる大泉洋。鋭い勘と冷酷な姿勢で様々な喰種を仕留めてきた、ベテラン喰種捜査官という役どころだ。白く縮れたヘアスタイルと、喰種と闘うための武器「クインケ」を装着した姿は、原作から飛び出してきたようなクオリティに仕上がっている。
鈴木伸之が演じるのは、CCGの捜査官・亜門鋼太朗。秀才でありながら高い格闘能力も持ち合わせる。「世界を歪めているのは喰種」という思想から喰種を徐々に追い詰める。喰種被害者やその遺族を思う正義感の強い男。
劇中衣装を担当するのはクリスチャンダダ(CHRISTIAN DADA)のデザイナー森川マサノリ。かねてから本作のファンだったこともあり、製作サイドのラブコールに応え、監督とともに原作のイメージを膨らませて映画オリジナルの衣装を担当した。
カネキとトーカの戦闘服、真戸と亜門のスーツ、そして「あんていく」の制服など、物語のなかでも印象的である衣装を手掛けた森川に、製作の裏話を聞いた。
原作ファンだったとのことで、衣装のイメージはしやすかったのではないですか。
漫画は、連載スタート時からずっと読んでいて、大体のイメージはありました。でも、映画の衣装製作は初めてで、どう立ち回ればいいのか分からないというのが正直な思いでしたね。
CGシーンも多かったですし、完成形が見えているわけではなくて。監督の意見を基本に、最後の決定権は監督に委ねるかたちでアイディアを出していきました。
製作する中で、大切にしていたことはありますか。
映画は漫画と違い、紙ではなくて映像。やりすぎるとコスプレっぽくなるだろうし、それだけは避けたかった。
コスプレ感を出さないためにも、監督からは「これは世界に発信する作品だから、映画としてのオリジナリティーを持たせてほしい」とお願いされていました。だから、ファンタジーを求める場所とリアリティを求める場所のバランス、原作に寄り添う部分と切り離す部分のバランスは大事にしていました。
その両立というのは、例えばどのような表現ですか。
原作に近づけた部分でいうと「あんていく」の制服。シーン自体も映画の中で占める時間が長いですし、漫画やアニメにかなり近づけて再現しました。
少しアレンジを加えた部分でいうと、赫子を使うシーン。赫子って、戦闘時のみ体内から出てくるわけで、その出てくる場所が服にもないと変じゃないですか。映像として見るのだから、そこは汚れや破れでリアリティをもたせました。
それから、トーカの戦闘衣装も。原作だとマントみたいなものを着ているのですが「現実的に考えて、マントを付けていると、あんな俊敏な動きはできないですよね。」ということを監督と話して、マント付きの戦闘服ではなくミリタリーベースのオリジナルデザインに変えてみました。
それぞれの衣装のデザインは、何を軸に決められたのでしょうか。
軸にしたのは、登場人物それぞれのキャラクターイメージです。カネキは、普通の大学生という設定ですし、あんまりかっこ良すぎない感じ。100点ではなく60点ぐらいのデザインを目指したかったので、原作もパーカーでしたしそのまま戦闘服に選びました。
スタイリングもよりカネキっぽくするために、インナーにはシャツをあわせて、裾からは切り替えてネルシャツを出した大学生っぽいスタイルにしています。でも、パーカーといっても戦うための服だから、素材にはコーティングをかけてしっかり強いイメージを出しました。
喰種に対抗するCCGの2人の衣装もキャラクターイメージからインスピレーションを得ていて、真戸さんはくたっとしたようなスーツ、亜門君はリアリティな部分を軽減してファンタジーな部分を誇張し、彼の正義感を表す戦闘服のようなコートにしました。
このように初めて映画の衣装を手掛けてみて、森川はこれまでのクリエーションとは何か違うものを感じたという。映画衣装には、コレクション製作時とは異なる面があったようだ。