ミュベール 2013年春夏コレクション より
TM & © DC Comics.(s13)
ミュベール(MUVEIL)は、デザイナー中山路子が手掛ける日本のファッションブランドだ。動植物をモチーフにした刺繍や、色鮮やかなカラーパレット、レースによるデコレーションを得意とし、毎シーズンキッチュなワードローブを提案している。
ブランドやアーティスト、アニメーションとのコラボレーションにも積極的で、映画『グレムリン』とのコラボレーションなど、新鮮なアプローチでファンを喜ばせている。そして、この9月にフレッドペリーとのコラボレーションによるカプセルコレクション、アクアスキュータムとのコラボレーション企画も発表。
そんな幅広い活躍をみせるミュベールは、来年(2017年)10周年を迎える。一つの節目を控えたデザイナー中山路子に、インタビューを実施。ファッションデザイナーを志した背景からブランド設立の経緯、今後の目標について話を聞いた。
高校へ入るまでは、美術や音楽、お裁縫は好きでしたが、洋服に視点を当てたことはなく、雑誌に目をとめたこともほぼなかったんです。東京生まれですが、渋谷や銀座といった街までいこうとも思わず、家の周りで過ごしていました。
高校へ進むと同時に、アルバイトをして、おそばせながら一歩外の世界に入ったんですね。そこで初めて銀座のブティック、ハイブランドのお洋服を見て。何も知らない私にはとても新鮮でした。
アルバイトで貯めたお金で、初めて自分の気に入ったお洋服を買いました。そのとき「なんて違う自分になれるんだろう」と、なりたい自分になれたような気がして。それまで制服ばかり着て、閉鎖的な中で生きていたので、お洋服でこんなに気分を変えられたり、自分を変えられることが、とても衝撃的だったんです。
単純な理由だったのですが、そこからこういうもの(ファッション)を作ってる世界って、どんな環境なんだろうと思い、雑誌『オリーブ』や『ハイファッション』などを読み漁りました。今シーズンはどんな自分になりたいかと考えさせてくれる読み物があったんだっていう驚きとともに、お洋服を巻き込んだ世界に強い憧れを持ちました。
いいえ、大学はファッション関係ではないところに進学したのですが、在学中もどうしてもお洋服が学びたくて。何をしたらよいかもわからないまま、夜間で色の勉強を始めました。
そのうち、夜だけでは何も学べないと感じて、大学から洋服の学校へ移ったんです。そのときは、まだ何になりたいかは決まっていないまま。そもそもお洋服がどうやって作られているのかも、洋服が何かも知らなかったので。デザイナーなのか、パタンナーなのか、広報なのか、販売なのか。それはどちらでもよくて、とにかく携われる仕事なら何でもよかったんですよね。
学校へは半年遅れて入学。3年を2年半で学ぶコースだったのですが、その半年の中でも(学生同士の間に)すごく差が出きていて。ものすごく勉強をする科だったのですが、その差を返したかったのでさらに必死でした。
半分はパターンの勉強で、半分はデザイン。そのほかに、ビジネスや素材の勉強があるのですが、卒業する頃には、作る人になりたいと思い始めました。授業の中で、0から作れるのが楽しくて、何もないところから作ることにのめり込んでいきました。
才能がある人は学校にはたくさんいて。ご両親がお洋服が好きで、その中で育ってきた人もたくさんいましたし、物心ついた頃から自分でコーディネートしてきている子もいました。そんな中、18年のブランクは大きかったんです。持って生まれたものや幼少から培った感性には勝てなくて、就職も本当に最後の方に決まりました。そこから、デザイナーアシスタントのお仕事が始まりました。