中山は、セカンドライン「ミュベール ワーク」も手掛けている。そして、2016年からはクリエーションラインも始動させた。
ミュベールの中で、デニムやチノがお客様から声をいただいていることが続いていて。その気持ちは大切にしたいですが、いつもコレクションに合うわけではなかった。自分もワークアイテムや男性的なものが好きなので、だったら、少年っぽさが香るラインで遊んでも楽しいのかなと思って、スタートさせました。
ミュベールを補佐するブランドとして、マンスリーで色々なものを作っていましたが、(コーディネートを考えたときに)全身ミュベールではなくて、カーディガンはミュベール、ボトムスはミュベール ワークのデニムだとか、普通に起こり得るなって。本来はじまったところにもう一度戻って、ミュベールをより毎日着ていただけるためのアイテム作りをミュベール ワークに戻したいなと思ったんです。
ミュベール クリエーションライン 2017年リゾートコレクション より
ミュベールも年齢を重ねております。ブランドもファンもみんな。そうなったときに、気持ちの変化があって。何その服?!っていうのが楽しくて、いろんな色でハッピーになりたいとずっと思っていたのですが、これまでなかった静かでいたい日、何もいらないと思う日が出てきたんです。
例えば、作家さんの器を見に行きたいとか、ギャラリーや静かな美術館に行きたいとか。これまでは気にしていなかったのですが、場になじみたいし、鑑賞するときに自分が邪魔にならないようにしたい、そんなときに欲しい、私が着たい服を作っています。
好きだ!っていう気持ち。コラボレーションのときも、ブランドさんの信念が好きだ!とか、衣裳を作らせていただくときも、アーティストさんの世界観が好きだ!とか。自分のブランドでも、このテーマがいい、素材を作っている作家さんをなんとかしたい。ただぐっときた(っていう気持ち)さえあればいい。それが難しいのですが、はまれば面白いんです。今もフレッドペリーさんとコラボレーションをさせてもらっていますが、すごく刺激を貰っています。
元々ヴィンテージが大好き、おばあちゃんのクローゼットにあるようなジュエリーやお洋服、写真集とか。歳を重ねた女性に興味があるので、そんな女性たちにずっと持ってもらえるようなものを作りたいなと願っています。
そして、次のヴィンテージになりたい。おばあちゃんになっても、若い頃に買ったミュベールの服を着て欲しくて、一緒に年齢を重ねるような存在になって欲しいです。もちろん今のおばあちゃんにも着て欲しいですしね。
本当にあっという間でした。ブランドを始めた頃は、高校のとき、大人の自分を夢見たように、もっとちゃんとしているだろうなって思っていました。振り返ると、まだまだ勉強が足りなくて、今やっとスタートラインにたったような気分ですね。
大きな目標ではないけれど、もう一回0の年に戻って、ブランドを育てていきたいなと思っています。一回一回のコレクションを大切にして。願わくば、マダムたちにお洋服を着てもらってショーをやってみたいですね。
旗艦店ギャラリーミュベールも4周年を迎える。アニバーサリーを記念して、スタイリスト岡尾美代子とともにイベントを開催する。
学生時代読んでいた、雑誌『オリーブ』の中で1番印象に残っている方が、(スタイリストの)岡尾さんでした。高いお洋服でコーディネートされているわけではないのですが、かといってリアルなコーディネートではない。何気なく持たせているスタイリングの中に、物語やロマンスがあるんだろうなって。ほっこりとは違う、とても‟今を抑えていてる”姿に惹かれていたんですよね。
就職した頃には、岡尾さんがポラロイド写真を撮られていて。遊園地やドーナツだとか、日常にあるものを絵本のように変えてしまうマジックというか、ただのドーナツがかけがえのないものだったり、思い出深いものにみせていく姿勢、それがすごく素敵でした。
実は、ミュベールも少なからず影響を受けていて、襟ネームなどを作ったり、一着の中で一つの顔で終わらないように作ることは、岡尾さんから学んでいます。
ギャラリーミュベール1周年のときも、パーティーの設定やお食事をお願いさせていただきました。そのとき、ミュベールってこういう世界にしたかったんだなと(改めて)感じて。
10年を迎えるにあたって、消費社会の中でお客様にもいろんな思いを持って(お洋服を)着ていただきたい、夢あるお洋服を作りたいと考えたときに、夢ある空間を作れる岡尾さんにお願いしたいなと思いました。
会場では、岡尾さんに洋服や小物を使ってミュベールの世界観を表現していただきます。2016-17年秋冬コレクションをテーマにしたチェキの写真展も行います。
世の中で生きていく中で、我を通すってすごく難しい。もちろん通さなきゃいけないときもありますが、お仕事であれば、相手があるし、一人ではなくチームでやっているので。
でも学生時代は、我を無条件に出せるときだと思うんです。一度我を出し切ると、自分というクセがわかります。だから自由に自分を解放して。それが醜いなと感じていても、綺麗なところがあるはず。私がもう一度学校にいけたらそうしたいなと思います。