企画展「パウル・クレー展——創造をめぐる星座」が、愛知県美術館にて、2025年1月18日(土)から3月16日(日)まで開催される。その後、兵庫県立美術館、静岡市美術館に巡回する。

クレーの軌跡と同時代の芸術動向

20世紀前半を代表する芸術家のひとり、パウル・クレー。線と色彩を駆使し、抽象表現のなかに生命のエネルギーを描きだしたクレーは、2つの世界大戦が勃発するなど激動の時代にあって、同時代の前衛芸術家と交流しつつ活動したのであった。

企画展「パウル・クレー展——創造をめぐる星座」は、同時代の芸術動向に光をあてつつ、クレーの軌跡を紹介する展覧会。クレーの出身地・スイスの美術館のほか、日本各地の美術館が擁する作品を一堂に集め、約100点の作品や資料を公開する。クレーの代表作はもちろん、ヴァシリー・カンディンスキーやフランツ・マルクなど、クレーと交流のあった芸術家の作品も目にすることができる。

チュニジア旅行と鮮やかな色彩の発見

初期のクレーは、線描を主な表現手段としていた。その作風が一変し、鮮やかな色彩が多用されるようになったのは、1914年のチュニジア旅行においてのこと。しかし実際、この旅行の少し前から、ロベール・ドローネーの音楽的な抽象性を賞賛するなど、同時代のフランス美術にも関心を抱いていた。本展では、クレーがチュニジアで手がけた《チュニスの赤い家と⻩色い家》や、ドローネー作品を彷彿とさせる《ハマメットのモティーフについて》など、色彩に富んだクレーの作品を展示する。

第一次世界大戦の経験

クレーがチュニジアから戻ると、ヨーロッパでは、第一次世界大戦が勃発。この大戦でクレーは、従軍による友人たちの死、前線から伝えられる破壊、そして自らの従軍を経験し、戦争に対する態度を複雑に変化させることになった。会場では、《アフロディテの解剖学》や《紫と⻩色の運命の響きと二つの球》など、大戦の影響のもとに手がけられたクレーの作品に光をあてる。

クレーとシュルレアリスム

第一次世界大戦後のフランスでは、クレーは、シュルレアリスムの詩人や芸術家から注目されるようになった。クレーが自らシュルレアリスムの作家を自称することはなかったものの、その作品にはしばしば、シュルレアリスムと通ずる関心を窺うことができる。本展では、舞台倉庫の道具が生命を帯び始める《小道具の静物》や、植物の細部が見せる驚異的な姿を捉えた《周辺に》などを目にすることができる。

バウハウスのクレー

1921年よりクレーは、ドイツ・ヴァイマルの美術学校「バウハウス」で教鞭を執るようになった。総合芸術としての建築を目指したバウハウスでは、前衛芸術家の参加が不可欠であると考えられていたのだ。ここでクレーは、教育の中心的な役割を担う一方、色彩を原動力に、自身の創作も行っている。会場では、《蛾の踊り》や《赤、⻩、⻘、白、黒の⻑方形によるハーモニー》などを通して、クレーの作風の展開を紹介する。

展覧会概要

企画展「パウル・クレー展——創造をめぐる星座」
会期：2025年1月18日(土)〜3月16日(日)
会場：愛知県美術館
住所：愛知県名古屋市東区東桜1-13-2 愛知芸術文化センター 10F
開館時間：10:00〜18:00(金曜日は20:00閉館)
※入館はいずれも閉館30分前まで
休館日：月曜日(2月24日(月・振)は開館)、2月25日(火)
観覧料：⼀般 1,800円(1,600円)、⾼校・⼤学⽣ 1,200円(1,000円)、中学⽣以下 無料
※( )内は前売および20名以上の団体料金
※前売券は、11月1日(金)から1月17日(金)まで販売
※⾝体障害者⼿帳、精神障害者保健福祉⼿帳、療育⼿帳(愛護⼿帳)、特定医療費受給者証(指定難病)の提示者は、各券種の半額で観覧可。また、付添者は、「第1種」ないし「1級」の各種⼿帳、特定医療費受給者証(指定難病)の場合、いずれも1名まで各券種の半額で観覧可
※上記料金で本展会期中にかぎりコレクション展も観覧可

■巡回情報
・兵庫会場
会期：2025年3月29日(土)〜5月25日(日)
会場：兵庫県立美術館
住所：兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1 HAT神戸内
・静岡会場
会期：2025年6月7日(土)〜8月3日(日)
会場：静岡市美術館
住所：静岡県静岡市葵区紺屋町17-1 葵タワー 3F

【問い合わせ先】
愛知県美術館(代表)
TEL：052-971-5511