窪塚洋介と降谷建志(Dragon Ash)を主演に迎えた映画『アリーキャット』が、2017年7月15日(土)にテアトル新宿ほか全国の劇場で公開される。
野良猫のように街の片隅でひっそり生きる男マルと、ひょんなことからそのバディとなった男リリィ。『アリーキャット』は、そんな2人が一人の女を守るために奮闘し、アツイ想いを取り戻していく物語だ。闇社会に絡んだクライムサスペンスの要素を取り入れつつ、人生に躓いた人間の再生が描かれる。
主人公のマルを演じるのは、ハリウッド映画『沈黙-サイレンス-』で演技表現がいよいよ世界に踏み出し、俳優として注目度が上がっている窪塚洋介。そしてマルのバディであるリリィ役には、今年で活動20周年を迎えるDragon Ash(ドラゴン・アッシュ)ボーカル・ギターの降谷建志。近年はミュージシャンとしてだけではなく、俳優としても活動の場を拡げている降谷は、NHK大河ドラマ「八重の桜」で新選組の斎藤一を演じたことも記憶に新しい。
ヒロインとなる土屋冴子役は市川由衣。冴子はシングルマザーで、懸命に生きるものの、ストーカー被害にあったりどこか幸が薄い女性。秀晃や郁巳にボディーガードなどを依頼し、追われる中で一人息子を守っていく。
そして彼女を付け狙うストーカー・玉木敏郎は芸人/映画監督として活躍する品川祐が怪演。ストーカーの枠を超え凶悪な生き物へと変貌していく役柄を品川祐が迫力のある芝居で魅せている。他にも、マルがボクサー時代にパトロンであったヤクザの幹部を火野正平が演じている。
監督は『木屋町DARUMA』『トマトのしずく』と、幅広い視点で人間ドラマを描く事に定評のある榊英雄が務める。予告編には、バディとなるマルとリリィが出会い、謎めいたシングルマザーの登場により、面倒なものに巻き込まれていく中で、逃げていたものに果敢に立ち向かっていく様子が切り取られている。公私共にリスペクトし合う2人の息がピッタリと合った劇中の空気が感じられる。
公開に先立ち、窪塚洋介と降谷建志にインタビューを実施。『アリーキャット』への思いや役柄について話を聞いた。
窪塚:『沈黙-サイレンス-』はこれまでの出演作の中では大作でしたが、ハリウッド作品の中ではかなり低予算の映画でした。そのため、ハリウッドの最前線という感じ、現地の第一線を経てきたという感覚はあまりなく、マーティン・スコセッシが30年撮りたかった映画の現場に居られたという気持ちの方が大きいです。現場は台湾人・日本人・アメリカ人・オーストラリア人と様々な国籍の人々が集まっていて、まるで“宇宙船地球号”のようでした。
『沈黙-サイレンス-』のあとは、日本で『怪獣の教え』という舞台を挟んでいます。ライフワークにしようと思っている作品ですが、これが日本に戻り仕事をする良いクッションになったため、随分ニュートラルな状態に戻ってから『アリーキャット』に臨めました。
窪塚:作品選びの基準はいつも直感です。監督・キャスト・台本という要素の中で、台本は特に大事ですね。出演を決めているのは、オファーの大体1〜2割なので、かなり少ないと思います。『アリーキャット』に関しては、監督と台本、そして共演が建志君という点で決めました。
窪塚:彼は現場での存在感が強かったです。現場にすごく熱を入れてくれて、時には役になりきりすぎて、僕が泣くシーンで先に泣いてしまうこともありました。撮影が終わっても自分のことをマルと呼んできたりして、ハッとさせられることも多々。持っているキャラクターが役者に向いているなと思います。また30代の今、彼と共演できることに運命的なものを感じていますね。ただ2人とも、皆さんが思うより大人になっていないなと思いました(笑)。
窪塚:マルという役を見ると、ボクシングという共通点があることから『GO』(2001年)の杉原と重なります。くすぶり感や寂れた感じが似ていて、マルは20年経った杉原なのかなと感じました。ただ『アリーキャット』の場合、マルが元ボクサーという点がストーリーに直接的に関わっている訳ではないので、そこが『GO』の杉原とは違うと思います。
窪塚:リリィがふざけていて、マルがそれを受け止めるクールな方ですね。2人は、元々持っている資質としては逆なのかなという気もします。どこかチグハグだからこそ、芯のところで合っていることが分かる。自分自身を生きるということ、マルはマルらしく。リリィはリリィらしく。シンクロするから、一緒に出来事に立ち向かっていくようになる。「どんな生き方をしてても、大事なことは変わらない」、2人の関係性はそんなメッセージにも受け取れます。
降谷:人からは滑稽に見えたり、平凡に見えるかもしれないですが、マルとリリィにとってはこれが正義だったり、これが答えだったり、これが幸福だったりする。ウソみたいなシチュエーションの中で、目をキラキラさせて必死に生きようとしてる。そんな2人だと思います。
窪塚:マルがリリィに猫を取られて、物語の最後に猫がマルのところに帰ってきたら、彼は新しいステージにいて生まれ変わっている。猫を通して、“魂の生まれ変わり”という捉え方ができます。自分の魂をリリィに預け、彼に同行し熱が上がったことによって、次のステージ行くことができ、同時に猫が帰ってきたと思えば、比喩になっていますよね。そうやって“再生する”というのが、猫を介して描かれている点が面白いと思います。
窪塚:もう一回自分をやってみたいです。
降谷:僕はオーランド・ブルームですね。俳優として特に好きという訳ではないのですが、生まれ変わったら刺青を一つも入れず、モヒカンにもせず、彼のようにただただモテるというバイブス(ノリ)で攻めたいです(笑)。
窪塚:芝居は「居」と書くこともあり、そこに「居」ながらにして演技をしている。ただ「居」るだけで、空気やオーラを出せることだと思います。一方「演技」だけになってしまうと、上辺で薄っぺらい。大事なのは見かけではなく、ハートだと思います。
降谷:撮影期間はたった2週間だけでしたが、人生がひっくり返るほどの経験でした。窪塚君と一緒に楽屋で寝るときもあったほど、ずっと一緒でした。主演としての姿勢やアクションの身のこなし、マルらしい抑えた芝居など、本当に色々と勉強になりました。
また、芝居は父親(古谷一行)の仕事でもあるので、人よりは俳優という仕事に対して尊敬の思いは強いです。背中を見てきた父親の仕事を垣間見れるのはいいなと思います。
降谷:そうですね、大河ドラマへの出演はすごく楽しかったです。これまでのDragon Ash(ドラゴン・アッシュ)のフロントマンとしての活動とは全く違った。フロントマンの仕事は、一人で防音スタジオにこもり、誰からもジャッジされない中、0から自分で作詞・プロデュース・演奏していくというもの。けれど、映像の現場はみんながどんどん要求してくれるので、“全員で作りあげる”という感覚が面白かったです。
降谷:ソロ活動に関しては、これまで20年間バンドをやってきて、1人で舞台に立つことが無関心を通り越して、拒否に近い状態でした。私は音楽ではなく、“ロックバンドをやっていること”がかっこいいと思っていた。なので、これまでソロ活動に関しては頑なに拒否していたのですが、先輩たちに言われて半ば強引に始めたのです。
実際にやってみたら、なんで今まで怖がっていたのだろうと思うくらい、できてよかったと思いました。排他的なところで生きている分、新しいことをやるのがどんどん苦手になって行く、それが大きかったのかなと思います。そうやって新しい経験をして、パワーアップした状態で『アリーキャット』に挑めたので良かったです。
なお、インタビュー当日に窪塚洋介が着用していたTシャツとズボンは、シュプリーム(Supreme)のもの。そして、彼のアイコンとも言えるサングラスには、レイバン(Ray-Ban)のティアドロップ型をチョイスした。足元には、Tシャツのグラフィックカラーとリンクしたリーボック(Reebok)のスニーカーを合わせた。
【ストーリー】
主人公の朝秀晃(通称:マル)は元・ボクシングの東洋チャピンオン。試合中の頭の怪我で、引退に追い込まれ、今は頭の後遺症に悩みながらもひっそり警備会社のアルバイトをしている。唯一、心を通わせていた野良猫の失踪をきっかけに自動車の整備工場で働く、梅津郁巳(通称:リリィ)に出会う。ある時、秀晃は個人的な理由によりシングルマザーの女・土屋冴子にボディーガードのアルバイトを頼まれる。たまたまその場に居合わせた郁己は、女をストーカーしていた男を殴ってしまい、一緒に行動するはめに。秀晃と郁巳は、共に女を守るため東京へ向かうことになるが・・・。
【作品情報】
映画『アリーキャット』
公開日:2017年7月15日(土)
キャスト:窪塚洋介、降谷建志、市川由衣、品川祐、三浦誠己、高川裕也、火野正平
監督:榊英雄
脚本:清水匡
音楽:榊いずみ
撮影:早坂伸
照明:大庭郭基
録音:日下部雅也
美術:井上心平
編集:清野英樹
助監督:山口雄也
カラー/ビスタ/5.1ch/129分/R15+
(C)2017「アリーキャット」製作委員会