チカ キサダ(Chika Kisada)の2017-18年秋冬コレクションが、2017年3月25日(土)渋谷・ヒカリエにて発表された。
会場では、山のように積み上げられた長椅子が、ピンクのスポットライトに照らし出される。濃厚なピンクの明かりが放つ甘く気だるい空気感が、どこか脆さを孕んだ退廃的な空間を生み出した。
テーマは「記念写真の記憶」。幼い頃からバレエダンサーとして舞台に立っていたというデザイナー自身の経験を投影し、ふわりと膨らむピンク色のチュールやギャザーで、幼い少女のような繊細さやあどけなさを演出。一方で、レザー素材やテーラードを組みあわせ、その甘さの中にキリッとエッジの効いた要素を忍ばせた。それはまるで大人になった女性が心の中に閉じ込めている、少女性と女性性の葛藤を表現したよう。
序盤は、”黒とピンク”そして”強さと可憐さ”というを対立する2つのテイストをルックに落とし込んだ。最初に登場したスキンヘッドのモデルが身につけるブラックのブラウスは、たっぷりとあしらわれたギャザーや、ボリュームを持たせた袖口が可憐で可愛らしい。その曲線的なラインとは対照的に、直線的なプリーツの効いたスカートやテーラードパンツを合わせ、ブラック1色のスタイルの中に甘さとシックのリズムを生み出した。
ブラックのジャケットは、バスローブのように胸元を大きく開け、ウエストラインをベルトで絞り、女性らしさを強調。一方で、裾部分にはバレリーナのスカートを想起させるチュールをふんだんにあしらった。また、胸元や肩につけられたベルトのようなアクセサリーも登場。フリルのシャツやワンピースに、エッジを効かせている。
終盤になると、藍色のルックが展開された。先ほどと同様にフリルやギャザーが多用されているが、しわ加工のされたシルクやベロアなどの緩い素材や、こっくりと落ちついた色味が、アンニュイな印象を感じさせる。透けるような粗いニットチュールが組み合わされたルックは、異なる2つの素材が藍色に溶け合う。
そして、フィナーレにはバレリーナのように豊かに広がるピンクのチュールスカートを身につけたモデルが登場。彼女が、ランウェイの中央にあるピアノを弾くというロマンチックな演出でショーは幕を閉じた。