ディオール オム(DIOR HOMME)の2018年夏コレクションが、2017年6月24日(土)にフランス・パリで発表された。
クリス ヴァン アッシュがクリエイティブ ディレクターに就任して10年が経った。今回はある意味彼にとっても節目のショー。グリーンの芝生に、ブランドのシグニチャーカラーである黒い輝きが吊るされた会場は、厳かで、それでいて爽やかな空気に包まれていた。
絶えず登場した細いテープやリボンには、「Christian Dior ATLIER」とその住所を記した。10年間、時をともにしたクリスなりのオマージュなのだろう。ある時はラペルの縁に、またある時はダーツやパターンの縫い合わせ部分を隠すように配された。アクセサリーとして、首にはストールとして巻き、スカルモチーフなどのインパクトあるメタルアクセサリーなどとともに、腕にはリボンをくくりつけた。
アトリエを根幹にもつデザインは、仮縫いのステッチやミシンステッチの装飾としても現れる。製作時に見慣れた光景を、今回はボディラインに沿うシルエットのブレザーの再解釈の手段として用いている。
ほとんどのアイテムの共通する要素として、フォーマルがあげられる。ジャケットは種類が豊富で、例えばバックスタイルの中でパターンが斜線に区切られた、アシンメトリーの燕尾服が登場している。また、パーツを分解したベストは、切り離した袖を首や腰に巻いたり、ノースリーブニットやポロシャツは、パンツにジャケットのウエスト下部分をドッキングさせたり。解体と再構築の中で新たなフォルムを生み出している。
スタイリングも正装の要素を忘れず、ジャケットにランニングショーツのようなショートパンツ、ブルゾンへは先に述べたドッキングの“フォーマル風”のワイドなスラックスというように、クラシカルな部分を出し引きした。その潮流は、ランウェイにおいてはおおよその変化がみられ、テーラードを強く押し出した序盤と、ストリートを強く押し出した終盤という具合に。それは、大人の男性への過渡期を表現するかのようで、学生を想わせるディテールとテーラリングのベースを融合させていた。
月桂樹とPARISの文字を描いたモチーフは、まさしくこの記念にふさわしい。あらゆるアイテムに、象徴的にあしらわれた。さらに、アーティストであるフランソワ・バードの絵画から取り入れたポートレートはストリートスタイルを格上げしている。
そしてカラーは、ブランドのアイコニックな3色。ブラック、ホワイト、スカーレットレッドやボルドーなどを含むレッド。時折キャメルやスカイブルーを取り入れてはいるが、今回はその3色のカラーリングに拘っている。