■プロヴァンスを代表するラベンダーショコラを創り上げるまで

ブティックには様々な種類のショコラが並んでいるが、それぞれの味と香りにA～Zのアルファベットがプリントされているショコラはデュラン氏の代表作。26種類の数あるフレーバーの中でも、一番の自信作は「L」のショコラだそう。これは、デュラン氏がブルターニュに住んでいたときに初めて手掛けたラベンダーの香りがモチーフになっている。「ラベンダーはよく香水やコスメで使われているが、食べ物では全く使われてきませんでした。でも私はラベンダーが本当に好きだし、プロヴァンスを象徴する香りだから、どうしてもラベンダー味のショコラを作りたかったのです。今まで誰も作ったことのないショコラだったから、私にとっても大きなチャレンジでした」と、このショコラへの想いを語るデュラン氏。

ラベンダーのショコラづくりの苦労を伺うと、「ラベンダーの香りは繊細なので、香りをショコラの中に閉じ込めるのは難しかったです。それに、ラベンダーと、中のフィリングチョコレートの味がぶつからないようにしなければいけませんでした。だから、色んなチョコレートとの相性を試して、ようやくラベンダーと一番相性が良いのはミルクチョコレートだという結果に行き着きました。ラベンダー味のショコラなんて珍しいから、発表したばかりの頃は多くの人が驚いていましたが、今は人気フレーバーになったからすごく嬉しいです」と話してくれた。

このラベンダーショコラ「L」は口の中に入れると、ラベンダーの華やかな香りとフィリングされているミルクチョコレートのまろやかな甘さがミックスされ、絶妙なハーモニーが生まれるのが印象的。そして最後にショコラのコーティングに使われるチョコレート「クーべルチュール」の濃厚なあじわいを楽しむ事が出来る。

この「クーべルチュール」とはフランス語で「覆う」という意味があり、多くのボンボンショコラの外側をコーティングするために使われる。デュラン氏が使うクーべルチュールはカカオ分が66%の濃厚なブラックチョコレートだ。そしてそれはフランスにおいて最も有名なチョコレートブランド、ヴァローナ(VALRHONA)社によって提供されている。ヴァローナは数多くの一流ショコラティエに原料のチョコレートを提供していることでも有名。

デュラン氏のクーべルチュールへのこだわりを詳しく聞いてみると「私はヴァローナと専属契約して、クーべルチュールを提供してもらっています。ヴァローナ社とハーブの香りに合うチョコレートを相談した結果、ジョエルデュランブランドオリジナルのブレンドに行きつきました。このパワフルな味のチョコレートでコーティングすると、ショコラを食べた後に口の中に残る、まろやかなほろ苦さが印象に残ります。実はヴァローナ社と専属契約しているショコラティエはフランスに3名しかいません」と教えてくれた。

■様々なスパイスによって展開されるジョエルデュランのショコラ

様々なスパイスが使用され、独特の風味を醸し出すジョエルデュランのショコラ。様々なテーマを元に作られているショコラの中で、デュラン氏が特に気に入っているショコラはどれか聞いてみた。「私は結構エスニックなスパイスを使ったフレーバーが好きです。フランスのマルセイユは、スパイスロードの終点なので、世界中のスパイスが集まります。そこでいろんな面白いスパイスを発見するのが楽しみなのです。中でも中国河北省の山椒や八角はすごく好きで、北アフリカのスパイスも大好きです」。

デュラン氏は日本のスパイスにも強く惹かれているという。「もちろん日本の素材を使うこともあって、今まででは抹茶やわさびを使ったショコラを特別に展開したこともありました。世界の様々なスパイスをどうやってショコラに活かしていくのかを考えるのが好きなのです。次は日本のシソを使ったショコラなんてどうでしょう」。