アンダーカバー(UNDERCOVER)の2018年秋冬コレクションが、イタリア・フィレンツェで発表された。
今シーズンはタカヒロミヤシタザソロイスト.(TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.)の宮下貴裕とのピッティ・ウオモ参加。昔から仲の良かった2人が一緒にやろうと決めたのは、ちょうどショー発表の1年前だったという。高橋が「order-disorder」、宮下が「disorder-order」。それぞれのテーマを共有はしたものの、2人はその後、互いの創作を見ることはしなかった。
気の知れた宮下とのランウェイだ。高橋はあくまで自分らしさを出した。そのためにベースとして選んだのは、メンズ服ではありふれたはずのワードローブ。ファーストルックから続いた“正装っぽい”ルックが、まさに今季のベースとなっている。あくまで正装ではなくて、どれをとっても捻りが効いている“っぽいもの”なのだ。序盤に登場した、裾をするほど長いプリーツスカートとの組み合わせは、ウールっぽいものから、スエード地のものまで、定番と斬新が往来している。
ジャケットとスラックスの組み合わせは、ふわふわのテキスタイルや工業用資材のような硬質的なマテリアルに変えて、“正装っぽく”を表現しているみたいだ。あるいは、コーデュロイも同じく正装を構成する要素として取り入れられている。一方で、チェック柄を筆頭とするフォーマルな柄は、ダウンジャケットやパーカーに合わせて、オーセンティックなスタイルの垣根を徐々に超えていく。
中盤以降に登場した、お馴染みともいえるフード付きのロングコートは、スーツと同じくタイベック素材をはじめとした工業用資材を想わせるテクスチャーで構成していく。序盤に見ていた服よりなぜか近未来的にさえ映るスタイルには、「Human Error」や「COMPUTER MALFUNCTION」などの印象的なロゴが配されていた。もうひとつ印象的なのが、ブランドが得意とするプリントで、そこには映画『2001年宇宙の旅』の場面カットがそのままあしらわれている。
ランウェイの最後は映画の世界が具現化される。暗転したランウェイに歩を進めるモデルたちのダウンコートには、ヘッド部分にライトが装着されていて、袖部分に携帯電話を装着するクリアな窓がある。しかも、ここに携帯を装着しながらにして、充電までできるというハイテクなものだ。
クラシカルな要素は後半部分になるにつれ薄れ、近未来化されていった。古典的なメンズ服をベースにしながらも、最後に想わせたメッセージは明らかに過激なものだった。これまでの歴史を紡いできたミリタリーやクラシックから、徐々にフューチャリスティックなものを捉えた変化は、今の時代を反映していたかのよう。それは何かを危惧したからなのか。あるいは、むしろ近代化された今が楽しいとさえ想わせるためのランウェイだったのかもしれない。