ユリウス(JULIUS)は、2018-19年秋冬コレクションを発表。
今シーズンは、オルタナティブとサイケデリック、2つの要素を表現。病んだ社会に対するアンチテーゼの主張方法として生まれたオルタナティブロックや、イギリスのレイブシーンのように、ノイジーで強いパワーを持ったコレクションだ。特に、実験的なエレクトロニックミュージックバンドのThe Future Sound of Londonからインスパイアされている。
タイトルは「ISDN」。90年代初頭に初めて世界を繋いだデジタル回線を示す。今となってはもはやアナログになってしまった技術ををあえて使用することによって、ノスタルジックなムードや反骨精神を現代的に浮き彫りにしていく。コレクションの発表形式に画質の粗いビデオを採用したのも示唆的だ。コレクション映像を手掛けたのは、シャルナ・オズボーン。アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)や、ヘルムート ラング(HELMUT LANG)、ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)の映像も手掛けた現代アーティストだ。
色素が滲み出たようなデジタルカモフラージュ柄は、赤をベースに黄色、黒と鮮烈な色で構成され、視覚に刺激をもたらす。ワイドパンツの布地の揺らぎに合わせて、さらに複雑な模様を描いていく。
同じ柄であってもカーキに変わると、曖昧さは残しつつ陰影や深みがプラスされ、異なる表情に。カーキのシャツと合わせたミリタリーテイストのスタイリングや、レザージャケット、ダメージデニムのコートとともに、ストリートの空気感をまとったレイヤードスタイルなど、ごく自然にコーディネートの中に馴染みながら、確かな存在感を放つ。
ミニマルなテンガロンハットや無骨なウエスタンブーツ、過剰に長く設定されたフリンジのディテールは全てアメリカを象徴している。ストレートな表現ではなく、イギリスのパンク、反骨精神を経由して表された1つ1つの要素は、冷静でありながらも強い主張を続ける。落ち着いた雰囲気のムートンコートを羽織るとさらに、硬質な雰囲気が加わっていく。
その一方で、どこか懐かしく、親近感を覚える曖昧さや柔らかさを持ったオレンジやイエロー、パープルといった明るい色合いが目に留まる。身体を丸ごと包み込むようなオレンジのコートは心に含みを持たせ、過去を回想しているかのようなウォーミングな余韻を残す。プレーンなイエローのシャツとレザーのワイドパンツのスタイリングもどこかノスタルジックなのは、既視感のあるイエローが安心感を残すからだろう。昔を懐かしむノスタルジーこそが、現代へのアンチテーゼの提起に繋がるのかもしれない。