クリスチャンダダ(CHRISTIAN DADA)の2018-19年秋冬コレクションが、パリ・ファッション・ウィーク最終日の2018年1月21日(日)に発表された。
ところどころにドラムが置かれた、渦巻状に客席が並ぶ円形の会場。外はどんよりした雲行きで、雨が降り続いているにも関わらず、会場の中は爽快感や解放感で溢れている。テーマは「SPIRAL(螺旋)」。“螺旋は上昇·下降を繰り返す円環である。この螺旋は、私にとって進化を表象する円環なのである”という、映画監督デヴィッド·リンチの言葉にインスパイアされた。
ドラムのパーカッションとともに、ランウェイはクラシカルなムードからスタートした。コーティングレザーのブーツカットやボディコンシャスなデニムがそこに加わり、パーカッションの音楽と共に一気にリズムを加速させる。メイントピックは、中盤に差し掛かるころ登場したカッパ(Kappa)とのコラボレーションだろう。MA-1やトラックスーツのアーム部分、トラックパンツのサイドライン、プルオーバーのフロントなどにはお馴染みのブランドマーク。面白いのは、スポーツブランドの概念を取り払ったことだ。ストライプのフォーマルシャツには、袖に沿ってマークがあしらわれている。
全体的にはビッグシルエットが先行している。こなれ感の出るオーバーサイズのアウターは、クロップドパンツやスラックスに合わせてバランスを図った。肩の張ったジャケットが見せるどこか懐かしい男らしさは、ディテールやカラーでフェミニニティをプラスして新鮮な印象に。後半になるにつれ、より目立ったハイウエストのラップパンツにトップスをタックインするナードな着こなしも今季の特徴のひとつだ。そして何より、森川自身が意図する「スパイラル」が存在している。ボタン位置のズレたセットアップは、着用者の体を軸にまるで回転しているようにみせたデザインだ。
めくるめく変わる素材のなか、クリスチャンダダらしい日本的要素を交えた表現は今季も健在。リンチのアート作品「スパイラル」へのオマージュとして織られた、京都・西陣織のセットアップ、そしてインディゴ染の生地を手縫いでつなぎ合わせたパッチワークのジャケットは、西洋のシルエットに日本の伝統美を落とし込んだルック。そして、モデルたちが最初から身に着けていた薔薇は、リンチの映画からインスパイアされたという。
時代を超え、形状を変え、様々な要素を取り入れつつ新しいものを生み出していく進化を、リンチの作品と重ね合わせてワードローブに投影した今季。見るもの、着るものに、今までとは異なる形で美しさを再認識させる。