「ブライトリング(BREITLING)」はスイス生まれの高級腕時計メーカー。創業者のレオン・ブライトリング、息子のガストン、孫のウィリーとブライトリング家3代に渡って成長・発展していったウォッチブランドだ。
映画『007 サンダーボール作戦』ではショーン・コネリー演じるジェームズ・ボンドが、時計「トップタイム」を着用。ジャズトランペット奏者のマイルス・デイヴィス、F1ドライバーのジム・クラークなど、著名人にもファンが多く、ラグジュアリーなウォッチブランドとして知られている。
そんな「ブライトリング」を語る上で欠かせないのは、「クロノグラフ」の発展と航空界との結びつきという2つのキーワードだ。
機械式腕時計の中でも人気が高く、数多くのウォッチブランドから新作が登場する「クロノグラフ」。これは、簡単に説明すると“時間を切り取る”ストップウォッチの機能を持つ時計のことを差す。
ケース横のリューズを挟むように上下に設置されたボタン。上は「スタート / ストップ」ボタンとなり時間を計測、下のボタンは「リセット」機能を果たす。時刻表示以外に、ストップウォッチの機能も備えた「クロノグラフ」は、特に、タイム測定が必要な「レーシングウォッチ」や「パイロットウォッチ」などスポーツウォッチに起用されることが多い。
ブライトリングと「クロノグラフ」との歴史は長い。「クロノグラフ」に惚れ込んだ初代レオンは、創業当時(1884年)すでに軍隊やスポーツ部門で注目されていたこの機能を向上させるため“より上質なものを…”と追求。出来上がったブライトリングの「クロノグラフ」は、洗練されたデザイン・革新的な機能性・メンテナンスの容易さと、作る側も使う側もメリットとなる3拍子が揃っていたため、他社と一線を画し1889年には特許を獲得。
その後、5分の2秒単位を正確に測ることのできる「クロノグラフ」も開発され、ブライトリングは医療分野でも一目を置かれる存在に。登場から10年の間で10万個のヒットを記録する。
2代目・ガストンが指揮をふるようになると、ブライトリングの「クロノグラフ」はさらに進化を遂げる。これまでケース横のリューズのみで「スタート→ストップ→リセット」の3動作を行っていた「クロノグラフ」が改良され、1915年には、ストップウォッチ用の独立ボタンを備えた「クロノグラフ」腕時計が完成。
ウィリーが会社を引き継いだ2年後となる1934年には、現在の腕時計クロノグラフの原型といえるツープッシャー・クロノグラフが誕生。4時位置にリセット操作専用のボタンを設けることで、ストップ後必然であった「リセット」が不要となり、連続的な時間計測を行えるなど、クロノグラフの操作がより豊かになる。現代のクロノブグラフの形状の起源となった。
そして、この「クロノグラフ」の発展が、ブライトリングを語る上で欠かせないもう一つのキーワード「航空業界と関わり」へと繋げていく。1936年、蛍光塗料を塗布したダイヤル、光を放つ回転ベゼルを併せ持つ、飛行士向けの「クロノグラフ」が完成。1938年に、航空機器に特化して製品開発を行うユイット・アビエーション部門が社内に設立されると、コックピットで使用されるオンボードクロックや飛行士向けの腕時計クロノグラフなど、“空の男たち”を支えるアイテムが続々と登場するようになる。
見やすい(視認性が高く)、軽量、8時間も耐久するパワーリザーブと3つのポイントを備えた、ブライトリングの時計機器はまさに画期的な存在。第二次世界大戦前には、国境を越えて注目を集め、英国王立空軍からクロノグラフの大量発注を受けるようになる。
そして、ブライトリングと航空の世界の繋がりを確固たるものにしたのは、1952年に発表した航空用回転計算尺を備えたモデル「ナビタイマー」の登場だ。電子機器・デジタル機能を備えていない当時のコックピットで、腕時計一つで飛行に関する様々な計算ができる「ナビタイマー」は、時計でありながら“フライトコンピューター”のようだと、その高い機能性から一世を風靡する。