ルール ロジェット(leur logette)の2018-19年秋冬コレクションは、「追憶のアトリエ(Atelier of Reminiscence)」がテーマ。
デザイナー井本雅子が綴る今季の物語は、一つのアトリエからスタート。「そのアトリエには大切なものがあった気がする…」と曖昧な記憶を頼りに、場所や建物が持つ古い記憶を手繰り寄せ、いまの人々の記憶に結びつけていく。そんなイメージがコレクションのインスピレーション源になったという。
新作ピースは、着想源とリンクするかのように、初めて見るのにどこか懐かしい印象を持つ。バイカラーのライナー付きチェック柄ガウンコート、くるみボタンが並んだトレンチコート、タータンチェックのフレアスカート、毛足の長いモヘアとニットのミックスコートなど、どれもノスタルジックで心を温めてくれる安心感を孕んでいる。
記憶の欠片が結びついて一つの形になるといったイメージは、パッチワークウェアが詩的に体現。大振りなフラワー柄、控えめな小花模様、そして規則性を持ったプリーツ素材など、一見交わることのないテキスタイル同士が繊細な技術によって結びつき、一つのスカートなって登場している。
全体的に漂う、夢見心地で幻想的なムード。しかし、素材を目を凝らしてみれば、ルール ロジェットが一貫して真摯に洋服作りに取り組んできたことがわかる。カシミヤ、シルク、レースなど、纏う者の心により沿い、肌触りにまでこだわったオリジナルの素材が並んでいる。
特にジャカード地は豊かな表情を持つファブリック。一度織ったミックスジャカードを機械ではなく、人の手で繊細にカットを入れることで、フリンジのように内部の糸を取り出した。コンパクトなジャケットの上で、雨のようにすっと伸びた糸はドラマチックな余韻を残していく。