イギリスのアイウェアブランド「リンダ ファロー(Linda Farrow)」。創設者のリンダ・ファローは、1970年にブランドをスタート。彼女はアイウェアをファションアクセサリーの1つのパート・トータルルックを完成させるアイテムとして捉え、斬新なコレクションを発表し続け、70~80年代にかけて数々のビックメゾンにもアイウェアを提供した。
一時期ブランドを休止していたが、2003年にリンダの息子であるサイモン・ジャブロン(SIMON JABLON)がブランドを再出発。2010年からは、上質な時代を超えたデザインと洗練された高級感はそのままに、ファッションの流行とリンクしたオプティカルラインを発表し、セレブリティからファッショニスタまで幅広く人気を集めている。
そんなブランド「リンダ ファロー」の第2の創業者とも言えるサイモンがブランドについて語ってくれた。
ブランド「リンダ ファロー」について教えてください。
ブランドを創業した私の母、リンダ・ファロー はアイウェア(オプティカル)にファッションセンスを持ち込み、また、アイウェアの歴史の中で最初にフェミニンなタッチを取り入れたデザイナーと言われています。彼女が残したたくさんのユニークなデザイン、遺産、歴史、そして洗練されたコンセプトは、ブランドに今でも引き継がれています。
現在の「リンダ ファロー」のブランドは母の時代と比べるとディレクションは異なるかもしれませんが、当時のDNAを大切にしつつ、アイウェアだけに留まらず、ハイクオリティーかつラグジュアリーなプロダクトやライフスタイルをトータルで提案しています。
母親のリンダさんはどのような方でしたか?
とても優しくて控えめでな人でした。他人のことを常に考えて、人に何かを与えようとする人、スポットライトに当ろうとしない人でした。そう、日本人のような人です!日本の人々は常に相手のことを尊重してくれますよね。
80年代に母はブランドをクローズしたのですが、その理由は”家族”でした。自分も含めて3人の子供がいたのですが、ブランドが大きくなる中で、自身のデザインよりも”子育”や”家族”を選んでくれたのです。一方で父は強いビジネスマンでした。
私自身は、母からはクリエイティブはもちろんパーソナルなところ、父からはビジネス面でのアグレッシブなところを受け継いでいると思います。
そうするとサイモンさんは両親のいいとこどりをしてる訳ですね。
もちろん!そうだと思いたいですよ!(笑)
20年近い時を経てサイモンさんが2003年にブランドを復活させました。その経緯を教えてください。
ブランドを再度立ち上げる以前は、父と一緒にビジネスをしていたのですが、たまたま母が残したアイウェアのヴィンテージコレクションを発見したのがターニングポイントでした。そのコレクションは膨大な量で、1000以上はあったでしょうか。本当にどれも素敵なコレクションでした。
当時のガールフレンド、トレイシー(現在はサイモンの妻でありブランドのPRを担当)とそれらを見ながら、「このヴィンテージアイテムを多くの方に届けなければ!」と思ったのです。ですので、最初のきっかけは非常にシンプルでした。ただただ、「何かをはじめなければ」と思ったのです。
それからすぐにヴィンテージアイウェアの販売を始めました。その後は、母のコレクションにインスパイアされたアイテムの展開、ブランドとのコラボレーションなど雪だるま式に展開が広がっていったのです。
私は本当にラッキーでした。ブランドにとって大切なDNAは母が用意してくれていたので、後は、いかに多くの人々にそのDNA、フィロソフィーを届けていくか、そこにフォーカスすればよかったのです。
ブランドにとって2回目の創業といえる状況だったと思うのですが、新しく取り組んだことはどんなことでしょうか?
先も挙げましたが、私がはじめた時、既にリンダ ファローには母の遺産、コレクションがありました。ですが、そこから先の、コレクションをライフスタイルに取り込んでいく工程、ブランディングなどあらゆる環境づくりは私たちが新しく挑戦した部分です。
リンダ ファローはラグジュアリーな製品を提供していますが、ただ単にいい商品であればよいという訳ではありません。ライフスタイルに自然に溶け込んで、生活をより豊かにしてくれるものでなければいけません。時代が変化しても人々がそんな体験ができるような提案をしていきたいのです。
そのために、トータルでブランドを形成していくことを重視しています。例えば、良質な素材の確保、時代に合わせたテクノロジーや素材のアップデート、より良いディストリビューション、ブランドのメッセージを伝えるための適切なPR、リンダ ファローのアイウェアにぴったりなモデルやセレブリティに着用してもらうことなどです。
そう考えると私はブランドの管理人のような存在ですね(笑)。
もちろん母の残したコレクションだけではなく、オリジナルのデザインアイデアもあるので必要に応じて取り込んでいるんですよ。
リンダファローというとセレブリティに愛されているイメージがあります。そうなるポイントは?
それは、結局のところ”BEST”だからです!
(照れながら)すみません!いえ、ときどき質問されるので細かく考えることがあります。その分析を話すこともできるのですが、結局、シンプルに答えるとそこに落ち着くんですよね。
コラボレーション活動について教えてください。ロンドンのブランドを中心に積極的に行っている印象を受けます。
ロンドンのブランドももちろんですが、実のところ国はあまり関係がありません。アメリカのブランドもそうですし、日本のブランドでは、ヨウジヤマモトと一緒にアイテムを発表しました。
私はファッションが大好きなんです。「ファッションを楽しみたい。」それがコラボレーションプロジェクトの大前提にあります。その中でリンダ ファローが選ぶ、アプローチするブランドは、コンセプトやアイテムが大好きで、リスペクトするブランドです。
コラボレーションには、ブランドの幅を広げる、新たなイメージを吹き込むという目的もあります。例えばマシュー ウィリアムソン。彼の独特なカラー、色使いなど、リンダには無いイメージを組み合わせました。
その他は「プロダクツ」というプロジェクトがあります。サポートしたいブランドのデザインに対して、一緒にプロジェクトとしてプロダクトを制作することもあります。
レディー・ガガとコラボレーションで商品を出す報道がありましたが本当でしょうか?
レディー・ガガのデザインチームとは一緒に仕事をしてます。デザインやアイウェアの提供を行っていますが、ライン、商品を発売する予定は今のところありません。
ただ、「商品が出る」という情報が出てしまった理由もあるのです。トレーシーとニコラ・フォルミケッティ(レディー・ガガやミュグレーのクリエイティブ・ディレクター)はとても仲が良くて、ニューヨークのバーで話をしている時のことでした。彼らは「将来一緒になにか提案できるといいよね」といった内容を話していたそうです。それをバーにいた誰か聞いて、勘違いした情報が別の誰かに伝わって、数日後にはブログやニュースで広がっていってしまいました。どんどん間違った方向で伝わっていってしまったんです。
本当にびっくりしました。アクシデントですよ!
最後に2012年コレクションについて教えてください。
「luxe」はさらなるハイクオリティ、これまでの境界線を越える挑戦をしました。例えば、24金のメッキをはじめプラチナ、バイソンといった素材をプレーム使用したり、カラーブロックをデザインに取り入れました。コラボレーションでは、メンズブランド「ボリス ビジャン サベリ(BORIS BIDJAN SABERI)」も展開します。
新作20モデルが加わった新コレクションには、今季もリンダ ファローならではの時代を超えた高いデザイン性と、妥協のない品質への追求というスピリットが受け継がれている。職人のハンドメイドによる、上質で洗練されたラグジュアリーなアイウェアコレクションを、ぜひ店頭で楽しんでほしい。