ポール・スミス(Paul Smith)の2019年春夏コレクションが、2018年6月24日(日)にフランス・パリで発表された。今季もまたメンズ・ウィメンズの合同ショーだ。
軽快な音楽とともに進んでいったランウェイ。それは今季のポール・スミスに通ずる部分があって、テーラリングにはいつになく活気があった。肩のラインは誇張され、シルエットはボックス型。ボトムスは緩いワイドシルエットが主流だ。メンズであろうとウィメンズであろうと分けることをせず、テーラードのシルエットは極めて男性的な印象だった。それを、重厚感ある伝統的なファブリックではなく軽やかなウール素材や“色の魔術師”であるポール・スミスならではのカラフルな色彩でモダンにアップデートしている。
テーラリングの活気の源となったのは、スポーティなニュアンス。今回は、ポールが幼少期より深く愛するサイクリングよりヒントを得たという。クラシックなテーラードの中には、シャツではなく市松模様やドットのトラックスーツを重ね、スタイリングでもモダニティを追及していることがうかがえる。
テイストがどうであれ、やはりポール・スミスの色の世界は気持ちまでハッピーにしてくれる。そこに投入された鮮やかなグラフィックプリントも今シーズンのキーだ。これは、ポールがデザイナー初期の時代に考案したフォトグラフィック。熱心な写真家であったポールの父ハロルドとともに撮りためた写真のアーカイブから作品を選んで採用したという。印象的だったのは海辺の写真。それは気持ちよくサイクリングをしていたときに見た風景みたいで、なんとなく今回のコレクションの疾走感とリンクする。ウィメンズでは流れるラインのドレスルックに、メンズでは軽やかなコートやハーフジッププルオーバー、シャツなどに投影している。
小物は、極端にクラシックなものと現代的なものの両極。例えば、メンズシューズは、ローファーやチェルシーブーツなどの典型的な英国スタイル。遊び心は垣間見えるが、ベースはグッドイヤー・ウェルテッド製法で、重厚感ある仕上がりだ。一方で、ショーの中でもシャープな印象をもたらしたアイウエアは、イギリスの老舗眼鏡ブランド「カトラーアンドグロス」とのコラボレーションによるものだ。幾何学的かつアーキテクチュアルなフレームにもまた、色の世界が広がっている。