クリスチャンダダ(CHRISTIAN DADA)の2019年春夏コレクションが、パリファッションウィーク最終日の2018年6月24日(日)にフランス・パリにて発表された。
テーマは「LAMENTS -From Close-range/Skyscapes」。再びアラーキーこと荒木経惟とコラボレーションした今季は、彼の作品である「LAMENTS 空景/近景」を元にしている。最愛の妻との日々、またその生涯を捉えた「センチメンタルな旅」シリーズ以降、彼女を亡くした翌年1991年に出版された2冊からなる作品だ。
情報過多のネット社会の中、真実とは何なのかといったテーマに向き合った。作品の中で語られる愛、喪失感や哀悼、生と死、そして光と影といった要素を表現している。スタートから続いたのはオールホワイトのルック。ただクリーンなわけではなくて、どこか儚さとか脆さとかが残る白。パンツやスニーカーには、ほんのり汚れみたいな跡がある。
パンツやスカートのパターンは面白くて、後ろのポケットは外側に向けて下がり、斜め配置されている。パターンの歪みや剥がれ、あるいはデフォルメは今季の特徴のひとつで、大きな襟のジャケットやトレーンを引くほど長い身頃と袖のメンズシャツは、カメラのレンズから覗き込んだように肥大化したがゆえ。また、袖やヨーク部分の解体されたウィメンズシャツ、肩の抜いたレザーライダースは、荒木がバルコニーのペンキが剥離したイメージから引用したものだ。ブランドの不完全性への美学が、作品と合わさることで、よりエフォートレスなニュアンスを生んでいたのは言うまでもない。
また、パンツはペプラムみたいなデザインで、ウエスト当たりから1枚布がレイヤードされている。これに始まりウエスト周りのデザインは今季の特徴でもあり、ウエストにロゴ入りのベルトを合わせたスタイリングも印象的だった。これは、帯を連想させるデザインで、クリスチャンダダがいつも提案している和のテイストだ。もうひとつ装飾としてタグの多用も見られる。腕にブレスレットのように付けたり、首にチョーカーのように巻いたりと、アクセサリーとしての機能を果たしている。
序盤から登場したホワイトキャンバスは、徐々に荒木経惟の作品に彩られる。不完全で規律のないワードローブに、アートの力が加わっていく。半分にカットされ鳥が突いたりんご、枯れた花、そして死んだヤモリ。デザイナー森川がセレクトした「近景」の3作品を落とし込む。ダークで退廃的でもあるデザインは、クリスチャンダダが得意とする日本の伝統織物技術と現代の素材や刺繍技術を融合するスタイルで提案している。
複雑にニットが絡み合うまるで“未完成”なスタイルのあと、序盤より大胆に登場した荒木の作品。グラフィックが投影されたワードローブは、アウターからトップス、ボトムスまで様々だ。フィナーレでは、最初見た白いキャンバスに、「空景」をそのまま落とし込み、中庭を色の世界で包み込んだ。