アイム メンの2025年秋冬コレクションが、2025年1月23日(木)、フランスのパリにて発表された。なお、翌日からは3日間、パリで特別展示「FLY WITH IM MEN」も開催する。
2021年にスタートしたアイム メンは、イッセイ ミヤケの創業者・三宅一生の「一枚の布」という考え方を、男性の身体という視点から捉え直してゆくブランドだ。デザインとエンジニアリングに通じたデザインチームのもと、「一枚の布」の可能性を拓くコレクションを展開してきた。
パリで初のショーとなる今季、アイム メンは、この「一枚の布」が織りなしうる、豊かな造形の可能性を追求したように思える。ここで「一枚の布」と言うとき、それは正方形や長方形の、直線でカットされたファブリックという平面にほかならない。いわば、平面を曲線的にカットすることで、身体という立体にフィットする造形=衣服を仕立てるのとは異なり、直線的な平面であるがゆえに身体とのあいだに必然的に生まれる〈間〉、そこから立ち現れる造形にこそ、主眼が置かれているのだ。
したがって、トレンチコートやケープ、ジャケット、シャツ、パンツなど、いわゆるベーシックなワードローブとされる衣服の数々は、直線的なカットに基づき、〈間〉を孕みつつボリューミーなフォルムを織りなす。とりわけ、アウターやトップスは直線的なショルダーラインで仕上げ、身に纏えば柔らかな曲線を織りなす。トレンチコートのヨークはバイアスで仕上げ、たなびくように流麗なドレープを形成する。ケープといったアウターは、やはりバックに存分な余裕を持たせ、丸みを帯びた量感を示す。また、トレンチコートにはパファーパーツを重ねるなど、レイヤリングが奥行きある立体感をももたらしている。
さて、男性の身体は、もしこう言って良ければ、曲線性の強い女性の身体に対して、どちらかというと直線的なイメージであると考えることができる。その男性の身体に、造形上の豊かさを持たせるのが、アイム メンが「一枚の布」を通して生みだす衣服であるだろう。そこで鍵となるのが、〈折り目〉だ。テーラードジャケットには大胆なプリーツを施し、あるいはブルゾンやパンツには随所に折り目を寄せることで、デザイン性や、立体感ある造形性を生み出しているのだ。
ところで、直線的なカッティングによる平面を身体に纏わせ、〈間〉を持たせつつ衣服を作りあげるというデザインには、たとえば日本の着物を重ねることができよう。実際にアイム メンにおいても、確かに着物を彷彿とさせる、カシュクールスタイルのケープやジャケットなどを見てとることができる。曲線的なカッティングで身体に合わせる西洋の衣服に対して、日本の着物においては、身体と衣服のあいだにある柔軟な〈間〉を調整する、つまり「着付け」てゆく。〈間〉が衣服を作るとき、着ることは必然的に、着れば身体を覆う受動性ばかりでなく、むしろ能動性をも帯びるのだ。
この、衣服という造形を立ち現せる受動性と能動性の交錯を象徴するのが、「折る」という動作ではなかろうか。いま、人が物を触ることを考えれば、それは能動的であるように思われる。しかし、自分の右手で自分の左手を触るならば、左手は確かに触られているけれども、同時に右手を触ってもいる。このように、能動性と受動性が交錯する〈折り目〉にこそ、人の存在は立ち現れるのだ。アイム メンはその意味で、身体とその外界との〈折り目〉を、衣服として示しているように思える。