タカヒロミヤシタザソロイスト.(TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.)が、2019年春夏コレクションを発表。
今シーズンのテーマは、「未完成の共作曲」。デザイナーの宮下貴裕は、パリ在住の9才の少年・オスカー(Oscar)とタッグを組みコレクションを創り上げた。少年ならではの視野の広さや日々成長していく輝きと、秩序の中で無秩序を模索し、革新を求める宮下の姿勢が相互に作用することで、より創造的でエネルギーに満ちたコレクションが誕生。2人のクリエイティビティは留まることを知らず、完成形に向かってさらに未来へと進んでいく。
オスカーによる満天の星空や宇宙飛行士のドローイング、また手書きのメッセージは、自由な精神と奔放な遊び心を感じさせる。一面に星空をプリントしたジャケットはリバーシブルになっており、裏返すとシンプルなメッセージのプリントとパッチが施された面が現れる。また、ジャケットやコートにあしらわれたフードは、プリント面を巻き込むようにして折り畳むと、無地の襟に早変わり。全てをオープンにする少年の屈託のなさと、その反面で心の中を隠そうとする大人、精神の二面性を表現した。
目まぐるしく変化する少年の行動と、宮下の多角的な洋服へのアプローチは、何通りもの着方で次々に表情を変えられる「180°シリーズ」に表現された。シャツにはベストが縫い付けられており、仕立て通りに重ねて着ることも、あえて垂らすようにして着ることも可能だ。リバーシブルであるのに加え、前後を逆にして着用することもでき、着方によって全く異なる雰囲気を演出することができる。1点ごとに風合いが異なるヴィンテージのアメリカンキルティングのジャケットや、柔らかな質感ゆえに自由な発想で着用できるかぎ針編みのニットもまた、“変化”を楽しめるアイテムだ。
自身が少年期に着用していたジェイプレス(J.PRESS)のマドラスチェックシャツなど、宮下の内面的な部分を投影したピースが登場。宮下にとって強い思い入れのある80年代から90年代にかけてのグランジシーンにオマージュを捧げたアイテムも同様だ。
熱狂や興奮に満ちた当時の様子を撮影した写真家、チャールズ・ピーターソン(Charles Peterson)の写真をフィーチャーし、ブルゾンやパンツ、スカーフなどの様々なアイテムに、ブラック、ネイビー、レッド、イエローとそれぞれ単色でダイナミックにフォトワークをプリント。使われているのは、NASAのために開発された素材「アウトラスト(Outlast)」だ。外気の寒暖に応じて温度調節することができるハイテク素材を採用している。“過去”を切り取った写真が“未来的”かつ宇宙を思わせる素材に載せられることで、時間軸が交錯。次世代の、また新たな表現へと繋がっていく。
オスカーに加え、他ブランドとの“共同制作”も多数散見された。先シーズンに続くサロモン(SALOMON)のシューズやウーフォス(OOFOS)のリカバリーシューズ、そして今季の新たな取り組みは、上述のジェイプレスに加え、ディッキーズ(Dickies)のジャケットやシャツ、パンツ、リオス メルセデス(RIOS MERCEDES)のカウボーイブーツ、クリアウェザー(CLEARWEATHER)のシューズなど、いずれもクリエイティブでオープンなマインドが漂う。また、映画にも精通している宮下は、今回も様々な映画を観たという。その中でも特に『ワンダー 君は太陽』が重要なインスピレーション源となり、満天の星空や宇宙飛行士のドローイング、ヘッドピースなどに落とし込まれている。