★ポートガス・D・エース:
主人公ルフィの義兄で、兄弟の杯を交わしたかけがえのない存在。歳はルフィよりも3歳上。"ひとつなぎの大秘宝"を手に入れたとされる大海賊・ゴール・D・ロジャーを父に持つ、炎を操るメラメラの実の能力者。「ワンピース」開始から人気のあるキャラクターだったが、アニメ483話(2011年放送)にて、ルフィを守るため負傷し命を落とした。
Q.20年担当しても、ルフィの知らない部分はありますか。
ルフィのお母さん。実はずっと「ルフィのお母さんはどんな人なのかな?」ってとても気になっていて。尾田さん(原作者・尾田栄一郎)に「お母さんを描いて欲しい」とお願いしたこともあったんです。
でもその時、尾田さんが「何を言っているんですか。少年は母親のもとを離れたときに冒険できるんですよ。僕は、冒険物語を描きたいんです。」って言われて。ルフィのお母さんについては描かないと決めていることを知ったんです。
アニメ「ワンピース」の放映開始から、田中真弓をはじめオリジナルメンバーが継続して声を担当。
ルフィが船長を務める「サウザンドサニー号」には“麦わらの一味”と呼ばれる仲間が乗船し、航海の旅を続けている。
<“麦わらの一味”声優一覧>
モンキー・D・ルフィ:田中真弓
ロロノア・ゾロ:中井和哉
ナミ:岡村明美
ウソップ:山口勝平
サンジ:平田広明
トニートニー・チョッパー:大谷育江
ニコ・ロビン:山口由里子
フランキー:矢尾一樹
ブルック:チョー
Q.アニメ「ワンピース」スタート時の頃のことを教えてください。
アニメ版スタート前、オーディションの頃の話になりますが。ルフィ役はなかなか決まらなかったんです。男性声優でいくか、女性声優でいくかも意見が割れて相当迷っていたらしい。私も何度もオーディションに呼ばれていて、最終的に男性の声優さんと私の二択になり、女性声優でいこうと決まったと聞きました。
でも実は違う話もあって。(ルフィ役より先に)ゾロ役に当時まだ新人だった中井くんが決まって、同じ時期にナミ役もやはり声優を始めて間もない岡村さん決まって。2人が新人なので、ベテラン声優を入れようということで、ルフィ役に私が決まったとも聞きました。
その後、ルフィを受けていた勝平君がウソップに決まって、ゾロ役も受けていた平田君がサンジに決まるんですよ。声の相性って大事なんですよね。
我々「ワンピース」の声優陣がよく話す“ネタ”なのですが…もしも、ゾロ役が中井君じゃなくて平田君だったら…、ルフィが私じゃなくて勝平君で決まったとしたら…って。私はウソップはできないし、サンジは中井君じゃないよね~って。よくこの話で盛り上がるんです。
Q.「ウソップをできない」のはなぜ?
もちろん「やってください」ってオファーがあれば、喜んで担当しますし一生懸命やります。でも、なにか違うし私はウソップのキャラにあってないなと。
Q.それは原作のキャラクターイメージと違うということでしょうか。
いえ、人柄や雰囲気かな。私とルフィの共通点は、自由であること。周りの人々に助けてもらって自由にやらせてもらっていることだと思います。ゾロ役の中井君も、サンジ役の平田君も、彼らの雰囲気とキャラクターのイメージが合っているんです。
Q.ルフィの声は特徴的ですが、意識的に作り上げたのでしょうか。
役に入る時に声を変えることはしません。一人の人間を演じるにあたって「どんな声にしよう」「(自分の声の中で)どの部分を使おう」っていう考え自体がそもそもあり得ないんです。人間って、そんなことを考えながら普段話してないですよね。
好きな男性を目の前にしたら、ちょっと声のトーンを上がっちゃうとかそういうのはもちろんありますよ(笑)。自分の持っている範囲で頑張っているんだからそれはいいと思う。でも、この声のトーンで話そうなんて思う人はいないですよね。
Q.なるほど。ルフィの成長に合わせて声を変化させたことはありますか?
全くしていません。ルフィは、精神的にもちろん変わっていますが、音としては何も変えていないんです。
物語の中で、ルフィが17歳から19歳へと成長していって、ちょうど19歳になるタイミングで「少し声のトーンを落としてもらえますか」ってオーダーもあったんです。
でも、私変えられないんです。17歳のルフィが船に乗った最初のタイミングから、自分が持っている“唸るような”低い声を使っていますから、これ以上低くなんてできないんです。
Q.演技するときに意識していることは?
気を付けていることは、「このキャラクターが話している」と聞いている人が信じられるようにすること。要するに、演技意識をどれだけ排除できるかが大切だと思うんです。矛盾ですが、演技しているからこそ、演技意識を感じさせないことが1番。
お客さんが聞いて「このキャラクター=人の口から出ている言葉」だと信じられることが大切です。そのためには“私であることしかない”と思います。私が自然でいることが一番いい。これは演技論の話になってしまうので、役者によって考え方が違いますが。一つの考え方として「私であること、私が話すこと」が私はいいなと。
一方で違うタイプの役者もいて、きちんと役作りをしてスッと役に入っていく人もいる。芝居しているなって感じさせながらも、上手な声優さんもいるんですよね。
でも、私はそれができないから「キャラクターが話している」とみせるために、私であることを大切にしています。これまでさまざま役をいただいていますが、私が演じる役はどれも同じ声なんです。「何を演じても、真弓は同じ」ってよく言われるますが、それはその通り。