アンリアレイジ(ANREALAGE)が、2019-20年秋冬コレクションを2019年3月19日(火)に渋谷ヒカリエにて発表した。
今まで「光」を追い続けてきたデザイナーの森永邦彦が、2019-20年秋冬コレクションから新しい“実験”をはじめている。フランス・パリでも2019年2月に発表した同シーズン。テーマは「ディテール(DETAIL)」だ。
「光」という現象的なことを追い続け、デジタルな服を提案してきたアンリアレイジにとって、今季提唱した「ディテール」というテーマでのコレクションは、180度逆の極めてアナログな試みだろう。一方で「神は細部に宿る」という言葉があるように、森永は自身の服作りの中で“ディテール”を大切にしてきた。だからこそ、ディテール、つまり細部にフォーカスし、拡大化することは、その言葉自体の概念を覆し、自分が信じてきたものを裏切ることでもあると森永は話す。
コートのボタン、ブーツのジッパー、ダッフルのトルグ、モッズコートのフード、ジャケットのポケット……すべてがデフォルメされ、通常ならデザインとして存在しないはずのものが、“ディテールを見落とすな”と言わんばかりの大きさで主張している。今季のアンリアレイジでは、ディテールはシルエット、さらには服そのものを構成した。この極端なデザインには、普段、通り過ぎてしまうようなちっぽけなことに価値を見出せたら――という森永の想いが込められている。
服という三次元のものを二次元である画面上で見ることが多くなってしまった現代に、森永はその画面では感じることのできない服のスケール感を感じてもらいたいとも思った。服は立体感、動き、素材感があってこそのもの。しかしながら画面から伝わる洋服は、悪く言えばその人の空想・想像の限りだ。
ディテールをデフォルメし、強調することは、現代人が見落としそうになっている服の良さを強調することでもある。MA-1の袖はベアトップのワンピースとなり、トレンチコートはエポレットや襟が肥大化されている。ニットはざっくり過ぎるほどのローゲージを採用していて、レザージャケットはまるでポンチョのようなフォルムだ。
パリでの発表時とは大きく異なり、今回のランウェイでは新たにメンズウェアを提案。ウィメンズが300%の拡大率であるのに対し、メンズは150%の拡大率で製作したという。
メンズモデルが着用するワードローブは、比較的ウィメンズよりアンバランスな印象は薄いが、そんな中、拡大化せず素直に“ディテール”を感じさせるブランドの真骨頂、パッチワークのテキスタイルは目立って見えた。しかしこれは、素直に捉えるべきものではないはずだ。チェック柄やレザーなどマルチなファブリックからなるシャツ、パンツ、ブルゾン、ジャケットといった過度にファブリックの多様性を見せたアイテム群は、素材を再認識させるための、誇張された“ディテール”表現のようにも感じられる。