パリ、ミラノ、ロンドン、ニューヨーク、そして東京で幾多もの有名ブランドのランウェイショーのメイクアップを手がけるM·A·Cに、2013年春夏のメイクアップトレンドを学ぶ。
今季のトレンドは単に「マニッシュ」「フェミニン」「マット」「メタリック」などと、ひと言では表現できない複雑さが特徴。あえて言うなれば「やわらかさ+エッジ―」。繊細、それでいて新鮮で自信に満ちたメイクアップという、とらえどころのない情緒性がポイントだ。
現代の美しい女性像にふさわしく、メイクによって無理になにか全く違うものに作り替えるのではなく、ありのままの造形に強弱をつけ、素の美しさを引き立てる。そこで重要となるのがベースメイク。ピュアで優しげのあるニュアンス、透明感、シームレスな肌が今季のトレンドだ。
M·A·Cは大きなキーワードとして、純粋無垢なパーフェストスキンの「シグネチャー」、半透明なメタリックやパステルカラーによる「ニュアンス」、セピアや砂漠を思わせる「ピューリタン」、リップやアイメイク、もしくは眉にアクセントを置いたパンクでシックな「サイケデリック」を挙げている。
左)ニュアンス/イッセイ ミヤケ 2013年春夏コレクション 右)サイケデリック/マリメッコ 2013年 春夏コレクション
世界中のファッションシーンで活躍するM・A・C メイクアップ アーティストリー エグゼクティブ ディレクターのリン・デスノヤールと、シニア アーティストの耕万理子が披露した「ニュアンス」メイクと「サイケデリック」メイクの実演から、そのテクニックをひも解いてみよう。
■ニュアンス(nu-ance)
リンが提案する「ニュアンス」メイクは、アイメイクとチークという通常はつながりのないパーツをシームレスに表現する「ブレンディング」というテクニックが最大のポイントだ。淡いピーチのフェイスカラーを眉下からアイホール、そして頬骨まで広く乗せ、ベースを作り、もうワントーン濃いピーチカラーのシャドウをアイホール全体に乗せる。
アイホールのくぼみとチークに、同色のバイオレットカラーをオン。「怖がらずにチークにも思い切って乗せて」とリンは軽やかに筆を滑らせる。ベースに使ったフェイスカラーをもう一度チークに乗せた後、このバイオレットを微量ずつピーチで繰り返しサンドすることで、まるで肌の一部になったかのようなニュアンスに作り込む。肌に溶け込むように輪郭はブラシで調整して。仕上げに素の唇に近いカラーのツヤ感のあるリップカラーで軽くメイクして完成。