リミ フゥ(LIMI feu)は、デザイナー・山本里美によって2002年秋冬コレクションからスタートしたウィメンズブランド。2000年秋冬コレクションから展開していたワイズのライン「ワイズビスリミ」を引き継ぎ、リニューアルする形でデビューした。
リミ フゥのブランドコンセプト
リミ フゥのコンセプトは、「雰囲気、分量、着やすさを大切に、飾りや誇張をなくし、着る人の個性と溶け合う余白を残す 市場や流行に距離を置き、デザイナー山本里美が今感じる意志を服のシルエットにつむぎ出す 清く力強い直線と体を包み込む独自のヴォリュームとドレープが共に存在する」。
リミ フゥは、2008年春夏コレクションから、パリに進出してコレクションを発表。また、2014-15年秋冬シーズンから2015-16年秋冬シーズンまでは東京にてランウェイショー形式での発表を行い、2019年秋冬シーズンにも東京でショーを開催している。
芯が強く、独特の存在感を放つリミ フゥのウェア。過去のコレクションを振り返り、リミ フゥのデザインを、分量感/黒/反骨精神/女性観といったそれぞれの特徴に沿って紹介する。
着る人を優雅に見せる分量感は、リミ フゥのクリエーションにおける重要なポイント。丸みを帯びた曲線的なシルエットや、流れるようなパターンメイキングのウェアを継続的に生み出し続けている。例えば、2011-12年秋冬コレクションでは、抽象的なアシンメトリーのオーバーコートや、ダイナミックな布地の流れを生かしたブラックのロングドレス、羽織とポンチョをかけ合わせたようなボリュームのアウターが展開された。
“ボディコンシャス”に着目した2019-20年秋冬コレクションでは、いわゆる“ボディコン”に見られるような身体のラインを強調するタイトな服ばかりではなく、オーバーシルエットのウェアからも、身体への意識の高まりを感じさせた。布地をたっぷりと使った、極端なオーバーサイズのジャケットやワイドパンツ、オールインワンなどは、身体のラインを消すようにしてボディを覆い隠す。見えなくなることで生まれる神秘性によって、逆説的に身体への意識を際立たせている。
ドレープ、Aライン、バルーンスリーブ、ラグランスリーブなど、リミ フゥならではの分量感をすべてエレガントに表現したのが2012-13年秋冬コレクション。1930年代のパリのスタイルを思わせるクラシカルなムードに、独自の分量感をマッチさせた。大きめのボタンを配したAラインのノーカラーコートや、ギャザーを寄せ、肩から身頃にかけてゆったりと仕立てたブルゾン、ドレープとともに立体的に広がるネイビーのドレスなどが登場した。
リミ フゥならではの、パターンメイキングを特に際立たせる色として、“黒”が挙げられるだろう。デザイナー・山本里美の父である山本耀司手がけるヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)にも共通するポイントでもあるが、リミ フゥのコレクションではいずれのシーズンも黒のウェアが存在感を放っている。
登場したルックがほぼ黒もしくは白で構成されていた2011年春夏コレクションでは、ショー終盤にロングドレスが多数登場。全面真っ白の、柔らかなジャカードドレスやしなやかなロングドレスと、厳かな印象のブラックドレスを対比的に見せた。布地の流れをそのまま生かしたシンプルなドレスは、黒1色にすることで神秘性やセンシュアリティを増し、分量をとって贅沢にギャザーを寄せた、ふわりと広がるドレスは、黒の持つ力強い存在感と風格を際立たせた。
また、同じ黒でも素材の質感によって様々な黒の表現を行っているのが見て取れる。マニッシュなセットアップには、無骨なウールギャバジンを採用し、エレガントなワンピースにはレーヨンなどしなやかな素材を用いている。1930年代のパリにフォーカスした2012-13年秋冬コレクションでは、艶やかな黒のサテン地をパールと共に用いることで、クラシカルな空気感をもたらしている。
また、2019-20年秋冬コレクションでは、透け感のあるブラックのチュールスカートをブラックのコットンシャツに合わせたり、白地のコットンに大胆に黒のペイントを施したり、はたまた厚みのあるブラックウールのコートが登場したりと、多彩な質感の“黒”が展開された。
リミ フゥにとって“反骨精神”も欠かすことのできないキーワードだ。パンク、ゴシック、ロック、フェティッシュなど、ハードなイメージのウェアが多数登場している。
例えば、セックス・ピストルズや、ヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)が築き上げたパンクカルチャーに着想を得た2020年春夏コレクションでは、ハーネスのようにベルトを多用したトップスや、「DO WHAT YOU BELIEVE」というテキストを配したチェックのパッチワークガウン、ボンデージパンツ、レザーのライダースジャケットなど、メッセージ性が強くアナーキーなアイテムが散見された。