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メイド・イン・ジャパンで充分作れることが分かりました。

直行さんはいわゆる大手アパレルにいらっしゃったわけですが、在職中にそのような経験をされていたのでしょうか? 自分の印象では真逆ですが…

直行:いや、当然やっていませんでした。基本的に付属は大手の付属屋さんにお願いしており、楽でしたね。だけど、このシステムに頼りすぎる事は「メイド・イン・ジャパン」を潰してしまう要因になりかねないとも思っていました。メーカーのMDという仕事は、基本的にコストを下げる事が重要。価格が合わない場合、第一段階として生地値を抑え、次に縫製工賃を抑える。そして付属を中国調達に変更するという一般的な流れになります。そのフローに疑問を持っていたので、ザ・リラクスでは全ての行程で出来るだけ職人さん、工場さんと直にやることを徹底しています。

で、結論としては?

二人:メイド・イン・ジャパンで充分作れることが分かりました(笑)。

直行:自分たちのブランドは決して安い価格ではありませんが、出来るだけ、無駄を極力少なくすることで、価格に対して価値のあるものを提案できていると思っています。アパレルの業界人やメゾンで働いている人の個人オーダーも多いのですが、「これでこの価格?」と驚かれることが良くあります。消費者の方にも、素材や縫製へのこだわりは伝わっているのではないかと思います。

直実:実際に売り場や街中で自分たちの服を着ている人を見かけると、想像より素敵な高い着こなしの人が多くて、想い描く人たちにちゃんと受け入れられているという手応えがあります。とにかく着ていただけているのは本当に嬉しくて、それが作る励みになります。

メンズとウィメンズを両方やっているわけですが、男女比はどれくらいですか?

直行:今はウィメンズが圧倒的に多いですね。ただ、時代感や流れには勝てないと思っていて、私はマーケットの予測はできないと思っています。当然メンズをもっと伸ばしていきたいのですが、そのバランスは時代によって変わっていくのが自然だと思います。だからそのことに対する焦りはありません。デザイナーが女性なので、彼女が作るメンズは当然彼女の理想の男性像なわけです。それを僕が着用できないのは不満でしょうが……。
直実 ……(笑)。

ザ・リラクス 2013年春夏ウィメンズ ザ・リラクス 2013年春夏メンズ
左)ザ・リラクス 2013年春夏ウィメンズコレクションより
右)ザ・リラクス 2013年春夏メンズコレクションより

直行:知人にも「メンズの型を減らした方がビジネスとして効率的じゃないか?」とか言われたりもしますが、彼女の感性がメンズ寄りなので、メンズをなくすとウィメンズが死んでしまう気がするのです。だから今後もメンズとウィメンズの両方をやっていきたいですね。

では、少し話題を変えまして、ブランドを立ち上げる前のお話をお聞きしたいと思います。直実さんはブランドを立ち上げる前は某大手セレクトショップにいらっしゃったんですよね。

直実:学生時代のアルバイトから始めて、約8年間都内で販売の仕事をしていました。

直行:私たちは高校からの長い付き合いで、それで二人ともとにかく服が好きで、地元の大学の情報学部(IT系)に入ってからそれがさらに加速して、勉強していたIT系を選ばずにアパレルに就職することにしたんです。で、自分はブランドを作る事を目標にメーカーに入るので、デザイナーは店頭を知る為にセレクトショップの小売りを経験したほうが良いと思いました。

ということは、その当時からブランド立ち上げに向けて動いていたということですか?

直行:そこまで具体的ではありませんでしたが、どんな形でも良いのでいつか自分のブランドをやりたいというのはありました。

直実:田舎者なので、具体的な形は想像できませんでしたが、何かやりたいという夢はありましたね。

編集、テキスタイル、縫製で新しさを表現。組み合わせでは無限にある。

洋服に興味を持ったキッカケは何かありますか?

直行:中学の時はそれほどでもなくて、高校の時にラフ シモンズヴェロニク ブランキーノのアントワープ系のクリエーションに衝撃を受けたのが始まりですね。1997年、98年のラフはいまだに好きで、家にたくさんあったりします。

直実:私もその時期に彼から「こんなのがある!」って言われて、彼らのクリエーションにどっぷり浸かりましたね。といっても高校生なので何着も買えないのですが、大学生になってからはお金が続く限り買いました。浜松市にあるセレクトショップに入り浸るようになり、仲の良かった美容師さんを通してスタイリングの仕事をしたり、とにかく服を楽しんだ4年間でした。

いきなりアントワープってのが面白いですね。その頃はメンズでは裏原、ウィメンズはギャルの全盛期でしたが、そっちの方向にはいかなかったんですか?

直実:田舎なのでそんな強烈なガングロとかはいなかったですね。自分もルーズソックスを穿くくらいで、109系の服とかは興味がありませんでした。ただ、ミニスカートとルーズソックスのシルエットは、とてもキレイで女の子らしくて好きですね。

直行:僕も当時メジャーだった裏原は全く興味がなくて、もっとオタッキーでしたね。当時はコレクション情報が豊富だった「high fashion」を読むのが楽しみで、発売の1週間前からそわそわしていました。TVの流行通信とhigh fashionは僕たちにとっての文化の入り口で、本当に夢のような世界でした。

ラフやヴェロニクを生んだアントワープという場所に行きたいとは考えなかった?

直行:二人とも普通の中流家庭の子供だったので、妄想はできても想像はできませんでした。まずは社会人として立派にならなきゃって思っていた。

【デザイナーインタビュー】ザ・リラクス - 編集、素材、縫製で新しさを表現。組み合わせは無限に | 写真

それで大手アパレルに入ったわけですね。そこではどういう仕事を経験してきたんですか?

直行:最初はマーケティングの仕事からスタートして、全社のブランドの“健康診断”みたいなことをしていました。ちょうど上場を控えていたので、全社の方向性を外部のマーケティング会社と組んで診断するような仕事ですね。

その時の上司に「何がしたいの?」と聞かれ、「自分でブランドを作りたい」と答えたら、それならMDを学ぶ必要があるということで、次にレディースブランドのMDになりました。こちらではモノ作りの流れとMDの基本を学べましたね。それから、コレクションブランドのMD、セレクト型SPAのMDを経て、ザ・リラクスに合流しました。

直行さんは3シーズン目から合流したんですよね?

直行:全く関わらないことは無かったのですが、バイイングで合同展のルームスに行ったとき、小さいブランドのブースが人でいっぱいで仲間たちに囲まれているのをみて、1人ではかわいそうになった。当初から良いモノを作っていたし、もっと多くの人にそれを伝えたいと思いました。それと、アパレル企業でどう生き残っていくかを考えた時に、あと30年今の自分の力と現状の環境で生き残っていられるとは到底思えなかった。そこで本腰を入れて、ザ・リラクスに取り組んでみることにしたんです。

【デザイナーインタビュー】ザ・リラクス - 編集、素材、縫製で新しさを表現。組み合わせは無限に | 写真

直実さんは大手セレクトの販売の仕事から何を学びましたか?

社会人としての基本、人の接し方など全てを学ばせていただきました。それと、会社に入るまでは自分の価値観だけで洋服に接してきましたが、自分と違う価値観があるのが分かった。当たり前ですが、価値観は人それぞれで、色々なカワイイ、カッコイイがあります。それに気づけたのは、モノを作る上で非常に役立っています。

あとは、売り場で目につくアクセントの入れ方があって、例えば袖のリボンの付属はハンガーに並べられた時に目に行きやすい位置につけています。スリーブアウトした時の見せ方とか、陳列した時のカラーバランスなども意識して作っていますね。お客様の購買心理とか行動とかマニュアルでは学びにくいことも、販売の仕事を通じて学ばせていただきました。

それで、販売の仕事と並行して、学校で服作りの基本を学び始めた。

直行:もうその時点で二人ともデザインはできると思っていたんです。だけど、造形の部分が欠けていて、単純に彼女が造形を作ることに向いていると思ったんです。

直実:両立は大変でしたが、洋服を作る基礎的な知識をこの2年間で学ぶことができ、学校を卒業すると同時にブランドを立ち上げました。

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