イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)の2021年春夏コレクションが発表された。
シーズンテーマは「アンパック・ザ・コンパクト(UNPACK THE COMPACT)」。「服をコンパクトに収めて世界中の人々の元へ届けるとともに、それを開けるときの驚きと歓びを感じてもらいたい」。デザイナー近藤悟史による3度目のコレクション発表は、そんな想いを元に形作られている。
前回2020年秋冬コレクション発表の際、パリへ送る荷物の量を目の当たりにし、「次回のコレクションは服がかさばらないように、極力量を減らせないか」と考えた近藤。1つの箱の中に全てのルックを収めるイメージからインスピレーションを得て、コンパクトな洋服づくりに取り組んだ。
コレクションで提案するのは、“畳む、重ねる、束ねる、丸める”など、洋服を小さく収めるデザイン。たとえば「OUT A PIECE」ライダースは、ファスナーでパーツをつなぎ合わせることで立体的なフォルムが生まれる洋服。パーツには伸縮性のあるファブリックを採用しているため、ファスナーで連結することで柔らかなシルエットを描く。パーツの着脱によって様々な着こなしができるのも魅力だ。
「TO GO」は、“着る→畳む→運ぶ”というサイクルをコンセプトにしたシリーズ。コートやポンチョは畳んでファスナーを閉じることで、バッグのようにして持ち運ぶことができる。素材にもこだわり、撥水性のあるシワになりにくいテキスタイルを用いた。
スポンジのように伸び縮みする「SPONGY」シリーズのニットトップスやタイトスカートは、小さく丸めて収納することが可能。綿とポリエステル混の伸縮性のある生地は、身体にそっと寄り添うようにフィット。ジグザグの編み目は、軽快な着心地を提供してくれる。
「洋服をコンパクトに収める」というアイデアから生まれた洋服は、収納時や携帯時の機能性に優れたものばかり。ただ、近藤がコレクションを通して伝えたかったのは、利便性の高さだけではない。届いた箱を開ける時、包まれたものを解く時、小さく折り畳まれているものを広げる時...ものの形が変わる瞬間に、人々が感じる“驚きと歓び”を表現している。
そしてそれは、「一枚の布」から身体と布の関係を見つめる“ミヤケイズム”に通じるもの。近藤が作る服は、どんなに小さく、コンパクトに箱の中に収められていたとしても、世界中の人々の手に届く頃には、やはり“洋服は人が袖を通して初めて生き生きとする”、そんなことを気づかせてくれるのだろう。
なお、今シーズンはパリ・ファッションウィークにて、コレクション映像「アンパック・ザ・コンパクト」をオンライン形式で発表。服が生きているように展示される不思議な空間を背景に、従来のランウェイショー形式で服を見せながら、「コマ撮り」と「展示」という表現方法を取り入れて従来とは異なる視点からも洋服を魅せた。