次に紹介したいのが「死」のカードを表すドレス。カードの意味としては、必ずしも悪いことを表すのではなく、正位置であれば苦境や終末を表すが、逆位置になるとこれからの可能性を示唆する。マリア・グラツィア・キウリは、結局のところ最もポジティブなので、このカードが一番お気に入りだと話す。
ドレスは8つのパーツで構成されており、上にはフードが付いている。古い衣装箱から取り出したような雰囲気を出せるようにと、グレーのチュールに古色の糸やバンドで刺繍をほどこし、くすんだ色合いを出している。
また、“少しの希望”を感じさせられる表現として、クリスタルの輝きをもつライン刺繍を全体にあしらっている。その刺繍が躍動感も生み出し、「死」のポジティブな側面を表現している。
フィルム内での登場はないが、ムッシュ ディオールが生み出したアイコン的ドレス“ミス ディオール”も、“タロットカードの世界”を表現するドレスとして製作されている。神聖なゴールドで表現された今季の“ミス ディオール”は、数百時間を費やして完成しており、ディオールのサヴォワールフェールの賜物と言える。
コルセット風の小さなトップに、ワイヤーメッシュのスカートを組み合わせ、全体に花をあしらった。縫い付けるのはすべて手作業。さらに、まるでツタのように張り巡らされた刺繍の上から乗せる花もまた一つ一つ手作業によって作られ、縫い付けられている。
フィルムの中では、その他にも節制、吊るされた男、女教皇、月、星などのキャラクターが登場した。
節制:パール加工のベルベット1枚から仕立てたドレープが美しいドレス。ハンドペイントの「ミルフルール」プリントが施されている。
吊るされた男:シネジャカードのパンツの上にエンブロイダリーをあしらった胸当て。