ジル サンダー(JIL SANDER)の2021年秋冬ウィメンズコレクションが発表された。
今シーズン、クリエイティブ ディレクターであるルーシー&ルーク・メイヤー夫妻が表現を試みたのは、人が内に秘める多面性。行動が制限され、ある意味強制的に自己と向き合うことが増えた今の時代、自身の内部に渦巻くさまざまな感情に悩み、苦しむ人も多いだろう。
ルーシー&ルーク・メイヤーは、そんな人々の中にある多様な欲求を認め、自由で大胆不敵なコレクションを作り上げた。さまざまな快楽で揺れ動く自己の存在を許そう、そして前向きに互いの個性を認め合おう。そんな風に背中を押してくれるようなポジティブなクリエーションである。
多面性を表現するアプローチは、意外性のある要素を掛け合わせたスタイリングに見て取れる。その象徴とも言えるのが、端正な佇まいのテーラードジャケットを用いたルックだ。ある時は、“不完全な美しさ”を持つ、ハンドメイドの痕跡を残したフリンジスカートと合わせて。ある時は、有機的な曲線を描く天然真珠の首飾りを差し込んで、そのコントラストを楽しんでいる。
ルーシー&ルーク・メイヤーが就任以来貫いているマスキュリンとフェミニティの対比も健在で、テーラードジャケットに、レースの装飾を走らせたシルクドレスをレイヤードしているルックもある。
さまざまな柄を取り入れることで、プレイフルに多面性を賞賛する姿勢も。鮮やかなフラワーモチーフや、“復活の象徴”とされる蝶のモノトーンモチーフ、バウハウスから着想した幾何学模様などが、コレクションにリズミカルなムードを運んでくる。
コレクションを彩るカラーも、秋冬シーズンでありながら明るく晴れやかなパレットで構成。バター、クリーム、パウダー、モーヴ、ライラック、ラズベリー、カルダモン、イエロー、ブルーと多彩な色彩が躍るように入り交じり、ポジティブな雰囲気をもたらしている。