ミスター・ジェントルマン(MISTERGENTLEMAN)の2021-22年秋冬コレクションが、2021年3月17日(水)、東京・渋谷ヒカリエにて発表された。
2021年1月、オオスミタケシは、47歳という若さでこの世を去った。ヒップホップユニット「シャカゾンビ(SHAKKAZOMBIE)」のBig-Oとして活躍してきた音楽家であり、ファッションデザイナーでもあるオオスミは、東京のカルチャー史を率いてきた1人でもある。そんな彼が、2012年、吉井雄一とともにスタートしたミスター・ジェントルマン。今季は、病室で過ごすオオスミと、吉井が製作を進めた“2人で作る”最後のコレクションだ。
ブランドスタート時から変わらない、既成概念を振り切った発想が今季も冴えわたる。コーデュロイ、ボア、キルティング、ウールチェックといった温かみの感じられる素材を主軸に、オーロラやエナメルの近未来的かつケミカルなテクスチャーで刺激を与えていく。それからブランドを支えてきたバンダナ柄も忘れずに取り込んだ。
複雑なスタイリングは、メンズファッションを支えてきたワークウェアやミリタリー、フォーマルスーツのエッセンスをベースにまとめられている。あくまでリアルクローズであることに寄り添う、普遍的なものへのリスペクトはしっかりと。特に今回は、随所でオオスミタケシが過去に手掛けていたフェノメノン(PHENOMENON)の東京コレクション デビューシーズンを彷彿とさせる。
クロップド丈のダウンコートにボーダートップス、ショート丈のパンツとキルティングのタイトパンツを重ねていく。レイヤードを楽しむのに最適なワンピースのようなメンズシャツは、まだらなブラウンのファートップスの下に重ね、キルティングパンツ、さらには、フェノメノン時代の代表的なパターン“レモンツリーカモ”のスパッツを組み合わせた。
秋冬にしかできない重いレイヤードは、ミスター・ジェントルマンの得意とするデフォルメや大胆なハイブリッドを強調する。前シーズンも登場した袖だけのトップス、ボアコートの上にも羽織れるエプロンのようなベストなどもその手法に加勢する。これをあわせたらどうだろう?あれをあわせたらどうだろう?ひとつひとつのアイテムの親和性を図っていくと同時に、スタイリングを考えるのがファッションの楽しさだと教えてくれる。
また、渾身のシーズンに、ブランド初となるG-SHOCK(ジーショック)とのコラボレーションモデルを発表した。G-SHOCKの原点であるスクエアケースの「DW-5600」にEL バックライトを搭載した「DW-5600E」を基調とし、あらゆるコーディネートに馴染み良いシーズンテーマカラーの“ベージュ”を採用している。
楽しいだけにあっという間だったランウェイを終え、挨拶に現れた吉井。最後に笑顔で挨拶する2人がもう見れないのかと悲しみにくれたが、お辞儀した後、いつも必ず横にいたオオスミの方に手を添え、拍手を促す吉井の姿にハッとさせられた。きっとオオスミはいつもと変わらず、そこにいたんだと思う。