コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)の2021-22年秋冬コレクションが、2021年3月22日(月)に東京・南青山で発表された。
情報が溢れる現代、雑多な世の中から離れた“静寂の世界”へ。川久保玲のそんな思いから生まれた今回のコレクションは終始一貫して、モノクロームで表現された。テーマは、色彩のない閑かなる風景「ランドスケープ・オヴ・シャドウ(landscape of shadow)」。黒と白が表現する静寂は、時に儚く、時に強い。
ショーの基軸を成すドレスルックは、皆が煌びやかに着飾った、かつての貴族たちの豪華絢爛な世界を彷彿とさせる。誰しもが自分を誇張し、自分を大きく美しく見せることで、個を主張したその時代のドレスやスーツを、今季は、自分だけの空間・時間を守る服へと置き換える。球体型のドレスの一連は、“自分だけの世界”を表しているかのようだ。
しかしながら、その“自分だけの世界”は決して完全体ではない。くしゃくしゃの切れ端を張り付けてチュールで覆ってみたり、大きな三つ編みでつないでみたり。まん丸のドレスは、フロント部分だけが垂直にカットされている。
ラッフルがランダムに重ねられたルックは、前から見れば主張的な個の世界を感じるが、後ろから見ればごくシンプルなパンツやタイトスカートが垣間見え、“外の世界へのつながり”を思わせる。“静寂の世界”へ向かう手段は、分厚い毛布にくるまれたようなAライン、頭からすっぽりかぶったジャケットからも見て取れるだろう。
一方で、均されていないシルエットには、内なる感情も予感させる。まるでコブのような凹凸は、人間の欲望とその葛藤のあらわれのようにも捉えられる。きっと迷いがあるのが当然で、迷いこそが人間らしさであり、人間の美しさでもあるのではないかと。混沌とした世の中で、自分だけの“静寂の世界”がいかに大切かということを、今を生き抜く強さを、教えてくれたのが歪でも美しいモノクロームのコレクションだったのではないだろうか。