サルバム(sulvam)は、2021-22年秋冬コレクションを東京・渋谷ヒカリエにて発表した。
今回のショーは、ファッション関係者に向けてではなく、未来を担う子供たちに向けて。会場には、小さな子供を連れた家族、ファッションやデザインを学ぶ学生たちを招待し、デザイナー藤田哲平の今の思いをありのまま伝えた。これからの日本のファッション業界を担う人たち、ファッション業界に夢をもってくれる人たちにメッセージを贈ることが、すでにパリ・ファッション・ウィーク中にデジタル配信でショーを行っていたサルバムが、4年ぶりに改めて東京の地でショーを行った理由だった。
登場したルックは、パリでの発表時のアイテムそのままに、スタイリングを組み替えたもの。一部、鮮烈な赤を纏うスーツやドレスルックは、東京でのショーのために用意した。
今の感情をそのまま服へと投影するのが藤田の手法だが、今季は、今を生きる人へと伝えたい“前向き”な思いをこれまで以上に詰め込んだ。サルバムで使用したことのないエレガントなコットンジャージを用いたり、有機的な曲線をディテールに取り入れたりと、サルバムにとっての新たな1歩も垣間見える。
そこへアンサンブルのように掛け合わせられていくのが、これまでのサルバムのアイコニックなディテールだ。しかし、以前東京で発表したころと違うのは、一層の洗練を纏ったこと。荒っぽかったステッチは、かつてと変わらず歪なラインの名残は残しつつも、美しく体のラインへと寄り添う。表地とライニングが無造作に重ねられ、張り付けられたかのようなデザインだったポケットは、折り返しが施され、バストからウエストにかけてにダーツと一体化するような形へと姿を変えている。
藤田はショーの最後、ステージに現れて、ショーに訪れた人に向けて下記のメッセージを送った(一部抜粋)。
「新しい時代に入った今、大きな変化の中でも下を向いて欲しくなくて、僕は、これからの時代を担う学生や子供たちにこのショーを見てもらいたかった。それが今回、4年ぶりに東京でショーをした唯一の理由でした。
学生時代って、焦りもあると思うんです。さらに今、世の中が大きく変わっているわけだから尚更かもしれません。僕も学生時代のころは、すぐに何かを成し遂げたくて、でもできなくて焦ってしまっていた時がありました。でも何か大きなことをやり遂げるためには、圧倒的に基本、基礎が必要です。今は焦らずに、自信をつけられるようしっかり基本を固めて、前だけ見て歩いてほしいです。世の中決まったルールなんてないですし、スマートにいかなくてもいい。自分で0から創っていってほしいと思います。
学生よりも小さい子たちにも、さらにその先の素晴らしい未来を創っていく存在になってほしい。いつか大きくなった時、お母さん・お父さんたちから、今日のファッションショーを見に行った話をしてもらえたらいいなと思います。みんなが一緒に前を向いて進めば、絶対にいい時代がくるはずです。」