アンセム エー(ANTHEM A)の2025年春夏コレクションを紹介。
鈴木麻莉子がデザイナーを務めるアンセム エーは、自由で現代的な感性で、個性を尊重する大人のためのワードローブを提案するブランド。信頼関係を築いてきた職人の技術を生かし、文化的背景や多種多様なテイストをクロスオーバーさせることで唯一無二のスタイルを追求している。2025年春夏シーズンのインスピレーション源となったのは、19世紀の西部開拓時代。太陽が照り、乾いた土地になじむウエスタンスタイルに、同時代のヨーロッパのエッセンスもミックスしている。
表情豊かなジャカードのジャケットやパンツにはウエスタンスタイルのステッチを加え、ハーフジップのシャツにはカウボーイを思わせるレースアップディテールを取り入れている。また、ゆったりとした半袖のブラウスにはアイレットを並べたポケットを配し、かっちりとしたストライプのパンツには、ゴールドに輝くペイントのアクセントを加えるなど、19世紀当時のスタイルや時代の風景を象徴的に表現したウェアが揃う。
また、神秘的なモチーフも目を引いた。カラフルなプリントシャツには「エクス・リブリス」と呼ばれるヨーロッパの蔵書票に描かれた挿絵のモチーフを落とし込み、透け感のあるブラウスやボトムスには、灼けたような色合いでバティックプリントが施されている。タロットカードを思わせるプリントTシャツや、牛と馬蹄の刺繍がシンボリックに光るシャツジャケットもまた、存在感のあるピースだ。
加えて、クラフトの温もりを感じさせる、技巧を凝らしたウェアも散見された。タイトなダブルジップのブラウスには、ステッチをかけて幾何学的な模様を縫い付け、シンプルながらも表情豊かな佇まいに。また、繊細なレース刺繍のシャツは、装飾的な刺繍のパーツと、ベースの生地を互いに交差し重なり合うように配置。アーティスティックな1着に仕上げた。
フォルムには遊びを効かせて独特の佇まいを描き出す。タイダイと淡いライトブルーのコントラストを効かせたコートは軽やかな素材感を生かし、さらりと抜け感のある佇まいに。パーツを取り外すことができ、様々な着方を楽しめる。
オープンカラーシャツの背面はざっくりと開く仕様に仕立て、サマーニットのカーディガンも前合わせの部分が大胆に開く造形に仕上げるなど、センシュアルなウェアも見て取れた。ホルターネックのドレスは生地を贅沢に用いてドレープを効かせ、後ろにエレガントなボリュームが出るように仕上げている。