どこか陰のあるパラダイス。2014年春夏のプラダ(PRADA)のメンズコレクションを一言で形容するとこうなる。その底抜けに明るいわけではないリゾートスタイルは、長袖のアロハシャツ、ハイビスカス柄の大型の旅行バッグとブリーフケース、ヘムがリブになったオープンカラーのシャツブルゾン、半袖のリゾート風ニットなどで構成されている。ワインレッドやターコイズブルー、ブラウン、ブラックを基調とした色使いはダークで、開放的なイメージとは少し異なる。
分かりやすいリゾートモチーフに目を奪われがちだが、子細に観察すると大きく4つの要素が混在していることが分かる。ひとつは、色調を抑えたリゾートテイスト。2つ目はイタリアンクラシックなテーラードで、3つ目はドリズラーに代表されるアメリカン50’sの要素。そして4つ目が、ラバー×キャンバスのブーツやチノパンツに見られるミリタリー・フレーバーだ。その4つが渾然一体となったミクスチャースタイルは、トレンドセッターの名に恥じない圧倒的な新しさを感じさせるが、一方でアメリカのプロダクトやスタイルへの憧憬も窺い知れる。
シルエットは、上半身をタイト&ミニマルにして下半身でボリュームを取ったスタイルが主流。トラウザーは太めで、バブル時を連想させるような長めの丈(2クッションくらい)のものが多く、オーバーサイズのトラウザーをリングベルトで絞って穿くルックも散見する。この“粗放な履きこなし”は、2013年秋冬で提案したシャツの襟をセーターから無造作に覗かせた“寝起きのエレガンス”に続く、「無頓着からくる美しさの表現」と言えるだろう。
全体的なメッセージは色々考えさせられるところもあるが、アイテム単品で見れば物欲を刺激する魅力的なものが揃っているのは間違いない。とくに、裾がリブになったアロハ柄のシャツブルゾンとハイビスカス柄の旅行バッグは、日本市場との親和性が高く争奪戦は必至だろう。ハワイ語の「Aloha(アロハ)」とは、好意、愛情、慈悲、優しい気持ち、思いやり、挨拶などを意味する。そんな心を持ってプラダを身につければ、ブランドのクリエーションにより迫れるのではないだろうか。
Text by Kaijiro Masuda(FASHION JOURNALIST)