映画『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』で主演を務める、佐藤健にインタビューを実施。人気コミックを原作に、約10年の月日を経て完結する映画シリーズにかける想いを伺った。
そもそも佐藤健が演じる剣心は、切れない日本刀“逆刃刀”で、維新後の新時代の悪と戦い続ける主人公であり、かつて“人斬り抜刀斎”として恐れられていた過去を持つ男でもある。
「最終章」では、そんな剣心が過去に自ら生み出してしまった最恐の敵・縁との対決が見どころとなるストーリー。物語の集大成となる本作で、再びどのように剣心役へとアプローチをしたのか?またシリーズの醍醐味となる大迫力のアクションへの挑戦や、俳優業に関しても胸の内を明かしてくれた。
■映画『るろうに剣心 最終章』公開おめでとうございます。前作『るろうに剣心 伝説の最期編』から約5年ぶりの撮影現場となりましたが、主人公・剣心役へのアプローチに変化はありましたか?
はい。前回までは、アニメ・漫画で生きてきた剣心をどのように再現するか?というアプローチをしていたのですが、「最終章」の現場では、過去3部作の剣心がすでに自分の中にいたため、“彼をどう動かすか”ということに注力しました。
なぜなら、今回はシリーズ最恐の敵・縁との向き合いが最大のテーマであり、剣心が縁に抱いたであろう“葛藤”を描くことが最も大切だと感じたからです。剣心は今でこそ多くの人助けをしていても、縁に対して過去の贖罪を背負う立場であるため、縁を本当の“悪”として一筋縄に片づけることができない。過去の自分の行いを悔やむ、自省の念が働いてしまうからです。そのため僕自身も、剣心が抱える苦悩に寄り添いながら、言葉やふるまいひとつひとつに、その気持ちを落とし込むことを意識しました。
■剣心の内面を映し出すことに、注力されたのですね。
はい。そして同時にそれは、剣心の魅力を引き出すことでもあると感じているのです。
従来の主人公とは違って、剣心の“二面性”を持つ人間らしい内面が、僕が昔から好きなところ。普段はオロオロしているのに、<人斬りモード>に入るとガラリと変わるところとか、笑っているのに、その奥では深い悲しみを抱えているところとか。『るろうに剣心』がたくさんの人々を魅了しているのは、そんな人間臭くて、どこかほっとくことができない剣心に共感を得ているのかもしれません。
■佐藤さんは、映画『るろうに剣心』の第1作から約10年の歳月とともに、剣心役を演じ続けてきましたが、役作りの上で、過去の剣心役を見直すこともあったのでしょうか?
自分が出演した過去の作品を、見直すことは、『るろうに剣心』に限らず、基本的にありません。当時の芝居もそうだし、今の演技ですらもう恥ずかしくて見てられないんですよね。たまに思いがけず、自分の映像を目にしてしまう瞬間なんて、もう耐えられない……(笑)『るろうに剣心』に関しても、映画が完成した当時に観た1回だけですね。
■作品を振り返らなくても、剣心役に入り込めたと。
今回の現場は前作から約5年ぶりのこともあったので、少しの不安はありましたが、いざ現場に入ると“すっと”剣心に戻ることができました。想像以上に、僕の身体には剣心が染みついていたので、安心して臨むことができました。
■映画『るろうに剣心』シリーズといえば、シリーズごとに加速する大迫力のアクションシーンも見どころのひとつです。大友監督率いる現場では、シリーズ当初から迷いなくアクションに挑むことはできたのでしょうか?
僕は、大友監督が手がけた大河ドラマ『龍馬伝』の“人斬り以蔵”役でご縁があった後、映画『るろうに剣心』の出演が決まったので、段階的に大友監督が作る現場での“空気”を知っていたことがアクションをする上でも、救いになったと思います。当時はまだ、俳優としてのキャリアも始まったばかりでしたし、こんなにヒットするなんて予想もしていなかったので、ハードな撮影ながらも必死にしがみつくかたちで、挑んでいたのを覚えています。
■シリーズの中でも、「最終章」が最も過酷な撮影現場だったとお伺いしました。
そうですね。毎回過酷なんですけど、今回はスタッフ全員にとっても一番ハードだったと思います。
特に記憶に残っているのが、クライマックスに向けた終盤のアクションシーン。縁との対決に向かうまで、たくさんの敵を相手にするシーンがあるのですが、剣心vs360度囲む多数の敵という、とんでもない構図だったので、とにかく肉体的にしんどかったです。