ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)は、2022年春夏ウィメンズコレクションを、フランス・パリにて発表した。
今回は、2020-21年秋冬ウィメンズコレクション以来のフィジカルショー形式での発表となったヨウジヤマモト。
「黒」という象徴的で存在感のある色を用いながらも、軽やかな佇まいに仕上げたドレスルックが印象的だ。薄く透け感のある布地を用いたドレスは、その柔らかな質感を生かして布地をねじったり、一方向にぎゅっと寄せて身体に巻き付けてみたり、あるいは布地の流れていく方向へそのまま開放してみたり。あたかも偶然作られていったかのような、一見すると不均一な造形に構築されたドレスは、“服”として身にまとうと均整の取れた美しさを描き出す。
加えて目を引くのは、レギンスを用いたスタイリングやミニスカート、ショートパンツをまとったアクティブなルック。アシンメトリーフォルムのカットソーにショート丈のバルーンパンツを合わせたり、シンプルなブラウスにミニスカートを合わせたりと、身軽なスタイリングによって、どこか飄飄とした装いを演出している。
また、裾にギャザーの切り替えを施したジャケットや、黒/白のダブルフェイスでアシンメトリーに仕立てたジャケットにはレギンスをコーディネート。脚が一部露出するようなデザインも相まって、快活さを際立たせている。
装飾的な要素は、「黒」という色の中に溶け込んでいくかのように取り入れられている。例えば、部分的に模様を描いた生地やレース地を用いたドレスは、たっぷりと生地を用いた分量感のある仕立てと不規則な布地の配置によって、黒い生地の合間から模様が見え隠れするような仕上がりに。チェーンを張り巡らせたベルトやチェーンネックレスを合わせたルックは、金属の色も全てブラックに統一することで、質感のコントラストを見せる一方、統一感のある佇まいを成している。
ショー終盤にはシルバーのペインティングをあしらったロングドレスが登場。黒い生地の中にすっと馴染んでいくような抽象的なタッチで施されたペイントは、光を反射し存在感を放ちながらも、どこか静謐さを感じさせる。
ラストには、クリノリンを用いたドレススタイルを展開。従来はスカートにボリュームを出すために用いられていたクリノリンだが、いずれのルックもその骨組みが見える形で用いられている。骨組みによってしなやかな布地の動きが変わり、服と身体の間に独特な空間が生まれる。服地の流れを生かす形で仕立てられた、それまでのドレスルックとは対照的で、クリノリンという要素が加わることによる、作為的な服の“変形可能性”を浮き彫りにする。