アンダーカバー(UNDERCOVER)の2022-23年秋冬ウィメンズコレクションが、2022年3月9日(水)、東京・国立代々木競技場 第二体育館にて発表された。テーマは「Cold Flame」。エレガントでフォーマルなウェアに、パンクスピリットを散りばめ、心の奥底に燻る、冷たい反逆的な炎をイメージした。
無音からスタートした会場に、プラットフォームのヒールパンプスで歩くモデルの足音が響き、観客の視線をランウェイへと集中させた。ブラックのセンシュアルなドレスには、身体のラインをなぞるようにゴールドのジッパーが配され、ある時はペプラムを、またある時はスリットを強調する。音楽が聞こえはじめ、盛り上がりを見せ始めた頃になると、黒に赤が混ざり合い、かと思えば花を咲かせた。
対照的とも思える無垢な白は、マニッシュなスタイルでの提案。グッとウエストを絞ったシルエットのジャケットは、ベストとのピースでクラシックな魅力を纏い、パワーショルダーで力強さを増す。ドレープが美しいワイドパンツは、トップスとは全く異なるテクスチャーで、起毛の柔らかさも加えられている。
ディテールのみだったゴールドが大胆に差し込まれたことで、パンクなムードが勢いを強め、一方で官能的なエッセンスとクチュールライクなシルエットも強く現れ始めた。エレガントなドレスルックに輝く、エッジィなアクセサリーや過激なディテールは、80年代のパンクロックなファッションを彷彿とさせ、対照的な表現の混在が如実となる。
次に登場するのは、先ほどとは対照的にブラック1色のテーラード。ジャケットの中はきちんとネクタイまで締めたシャツ、ボトムスはタイトなスラックスへと変わり、正装としての威厳が醸し出されている。とは言え反逆的な精神は宿り、ウエストにはレザーのベルト、肌が透けるニットのトップスが用いられた。鼻と耳までを完全に覆うそれは、服でありながらもある種アクセサリーやメイクのような役割も果たしている。
トレンチコートやニットカーディガンが予期させるのは柔らかな日常かと思えば、それらもスタンダードなわけがなく、全て片腕のみのアシンメトリーな身頃とマフラーが一体化したスタイル。ビーズやガラスビジューで表現されたパンキッシュなタータンチェック柄のライダースジャケットは、反逆的なスピリッツを昂揚する。
ラストにかけては、ビジューのハート模様が揺れるカクテルドレスやショッキングピンクのフェザードレスが現れる。最後は、ランウェイを巻き戻したかのように、ジッパーが配された“あのドレス”が再来するが、最初とは異なって色と装飾に溢れている。ナイトシーンを彷彿とさせるドレスに、コンパクトなライダースジャケットが組合わせられることで、艶かしさとタフさが異質の共演。刺激的な鋲とともに花や鳥の刺繍が施されたジャケットは、時に肩を分断してショールのような繊細さも加味し、過激なエレガンスを漂わせた。