私は、日本という国は非常にヨーロッパ・イタリアの人たちに近い感覚を持っていると思います。おそらくアジアの中では、最も文化的にヨーロッパに似ている国といえるのではないでしょうか。
日本人はヨーロッパの文化について、非常に見識が深い。そしてヨーロッパのファッション、スタイルについてもよくわかっています。それに、特にサントー二のお客様のほとんどが、ヨーロッパの服装やスタイルを好み、身に着けているんですよ。ですから、それほど、他の国、例えばイタリア市場やフランス市場と大きく異なることはないと思っています。
それから、日本の市場は非常にプロフェッショナルですよね。素晴らしいバイヤーがいて、高い商品知識がある。それから常に競争相手がいるということも、会社の成長には欠かせない。日本人は、ただブランドがあるからという理由だけでは商品を購入しません。価格が品質に見合っていると思うからこそ買うんです。だからこそ、ブランドネームに頼らず、品質にこだわった私たちのブランドも、日本市場で成功を収めることができました。
現状維持ではなく、何か新しいことを始めなくてはいけないと思っています。特に日本市場での話をすれば、メンズでは十分やれることをやってきました。ですから今注力しているのは、レディースのコレクションですね。5年ほど前から始めたのですが、まだ日本には本格参入していませんでした。なぜなら日本市場は、特にレディースの場合には、少しずつ様子を見ながら、時間をかけてマーケティングしていかなければならないとわかっていたからです。でも私達にはそのチャンスがあると思いますし、その市場の可能性を信じています。
私が今履いている、ダブルモンクの靴は個人的に好きなモデル。モカシンも捨てがたいですけどね。今日着ているようなスーツスタイルにも合います。エレガントな路線でも、カジュアルなスタイルにもあわせられる。ジーンズでも良いですしね。クラシックだけど、同時にスポーティーでもある。これは常にサントーニが目指しているテーマでもあるんです。洗練されたエレガントさがありながら、やりすぎにはならないよう、どこかでカジュアルさも取り入れています。
女性にはこのパンプスがおすすめですね。綺麗なフォルムでしょう。サントーニのカルチャーを体現している。レディースコレクションに関しては、常に程よいセクシーさを表現できるような靴作りを心がけているんです。
エレガントなスーツに身を包み、終始落ち着いた声のトーンで質問に答えてくれたジュゼッペ。その姿からは、ブランドに対する自信、そして若くして父の会社を継ぎ、世界的に有名なブランドへと成長させた自分自身に対する自信がひしひしと伝わってきた。常に革新を追い求めてきたという彼の鋭いまなざしには、妥協を許さぬゆるぎない職人魂と、刻一刻と次のチャンスを狙うビジネスパーソンとしての姿が見て取れた。
Interview and Text by Sena Inoue