ゼニア(ZEGNA)の2024年春夏コレクションが、2023年6月19日(月)、イタリア・ミラノにて発表された。
現代のワードローブに調和する上品さを追求するなか、今季のゼニアが提案するのは、軽やかで流れるような量感を持つウェアの数々だ。アイテムにはたとえば、クラシックな装いの代表格であるスーツを筆頭に挙げることができるが、ジャケットはラペルを小さくまとめ、時として袖丈は3/4丈にするなど、決して肩肘張ることはない。また、スタンドカラーのジャケットや、ラウンドカラーのトップスなどに、全体として抜け感のあるセットアップが展開されている。
テーラリングにも見られる抜け感に呼応するようにして、ウェアのシルエットは気品を示しつつもリラクシングにまとめられている。ロングコートやジャケットなどは、ややショルダーをドロップさせ、幾分余裕を持たせたボディは心地よく下方へ落ちる。オールインワンやボトムスも程よい量感を湛えつつ、流れるようなドレープを見せている。
素材において特筆されるべきは、リネンだろう。ゼニアはそこに、軽快さと気品を見てとっている。清涼なリネンは一般に、カジュアルな装いとして用いられているが、しかしヨーロッパでは、白く爽やかなリネンは古来、高貴な素材として知られていた。つまり、羊などから毛を刈りとり、紡ぐ動物性の繊維に比べ、リネンにおいては、茎を刈りとり、陽の光や風にさらして茎から繊維を得て、それを紡ぐことで繊維となすというように、ひじょうに手間と時間を要したからだ。
ゼニアが用いるリネンは、リネンが古来有していた清涼な気品を、現代のワードローブに接続しているものだといえるだろう。もちろん、リネンをギャバジンやニットといった多様な組織として用いるばかりでなく、ボンディングによりハリを持たせたカーフレザーなども採用されている。いずれも、装いとしはあくまで軽快でありながら、衣服の流れるような量感をも支えている。
ゼニアらしいトーン・オン・トーンの配色でまとめられたカラーは、抜け感のある気品に呼応するように、エクリュ、ライトグリーンやライトオレンジなど、クリーンで爽やかなものが軸。また、土を思わせるオレンジやブラウンなど、随所に力強い色調も見られ、コレクション全体にメリハリを持たせている。