ナマチェコ(NAMACHEKO)の2023年春夏コレクションが発表された。
ラテン語で白紙状態を意味する「タブラ・ラサ(TABULA RASA)」と銘打たれた、今季のナマチェコ。人はあらかじめ多様な観念を持っているのではなく、いわばまったくの白紙としてこの世に生まれ落ち、感覚と反省とを通してあらゆる観念が書き込まれてゆくことになる。だからそこでは、既存の全き秩序に抗して、経験によって後天的に自己が形成されるのだといえる。
多種多様な経験が互いに縺れあって織りなす自己は、だから、ある種のパッチワーク様とでもいえるものであり、時としてそこには裂け目が露呈しよう。ナマチェコにおいては、セパレートやスリットに基づいてデザインされたワンピースやトップスなどが、辛うじてボタンを介して繋ぎとめられ、裂け目の脆さを仄めかす。
デニムパンツには、大胆なブリーチを施すことで、ほとんどホワイトが一面を占めるような表情に。しかしそこには、デニムのインディゴカラーが執拗に残存する。また、トップスやパンツなどの大胆な編み模様、ニットにあしらわれたフリンジやグラフィックなど、ナマチェコならではの装飾性も随所に見られた。