企画展「版画×写真 1839-1900」が、東京の町田市立国際版画美術館にて、2022年10月8日(土)から12月11日(日)まで開催される。
企画展「版画×写真 1839-1900」は、世界初の写真術であるダゲレオタイプが公表された1839年を起点として、写真の技術が発達して印刷技術として実用化される19世紀末までのヨーロッパを中心に、版画と写真の関係性に光をあてる展覧会だ。
版画は、何世紀にもわたってイメージを写し伝えるという役割を担ってきた。そうしたなか登場した写真は、画像を写して複製するという版画と共通した機能を持っており、実際、19世紀における両者の関係は対立的に捉えられてきた。しかし、技術的に成熟していなかった初期の写真には、版画によって支えられる側面もあった。
世界初の写真術として知られるダゲレオタイプは、高精細な画像を生みだすものの焼き増しができず、複製のためには版画家の技術を欠くことができなかった。一方、1841年には、ネガ・ポジ法により焼き増しが可能なカロタイプが考案され、急速に発展。50年代になると、鮮明な画像が得られるコロディオン湿板法と鶏卵紙の組み合わせが普及してゆくこととなる。
写真の技術発達に伴い、画像を写す正確さと迅速さが増してゆくと、写真は必然的に同じ機能を有する版画の領域を侵すようになった。たとえば、油彩や彫刻といった美術作品に基づいて制作される銅版画「複製版画」は、さまざまな美術作品のイメージを広く伝えてきたものの、複製技術としては写真に優位性がある。すると版画は、メディアとしての実用的な役割から離れ、美術表現として生き残る道を模索するようになったのだ。
一方、改良が重ねられた写真は、1850年代頃から多くの人びとが利用できる技術となった。やがて芸術表現としての写真にも関心が向けられるようになるものの、既存の美術界はこれを非難、写真はレンズの前のものを機械的に写すだけで芸術ではないとした。これに対して写真家は、構図や光の感覚、焼き付け、仕上げによって創意を示すことを試み、さらに技術を発展させると、瞬間を正確に捉えるという写真ならではの特性を活かした表現を探ってゆくようになる。
本展では、19世紀のヨーロッパを中心に、版画や写真、そしてカメラなどの関連資料など180点を通して、版画と写真の関係を紹介。オノレ・ドーミエやエドゥアール・マネ、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックなどの版画、ギュスターヴ・ル・グレイやマクシム・デュ・カンなどの写真に加えて、ダゲレオタイプを複製した銅版画、写真と版画のハイブリッドな技法、そして銅版と木版を組み合わせて写真のような見た目に仕上げた「バクステロタイプ」など、版画と写真の境界が緩やかであった時代の多彩な作品も展示する。
企画展「版画×写真 1839-1900」
会期:2022年10月8日(土)〜12月11日(日)
会場:町田市立国際版画美術館
住所:東京都町田市原町田4-28-1
開館時間:平日 10:00~17:00 / 土日祝 10:00~17:30
※入場はいずれも閉館30分前まで
休館日:月曜日(10月10日(月・祝)は開館)、10月11日(火)
観覧料:一般 900円(700円)、高校・大学生 450円(350円)、中学生以下 無料
※( )内は20名以上の団体料金
※身体障がい者手帳、愛の手帳(療育手帳)、精神障がい者保健福祉手帳の提示者および付添者1名は半額
※無料日:展覧会初日 10月8日(土)、文化の日 11月3日(木・祝)、シルバーデー(65歳以上は無料) 10月26日(水)および11月23日(水・祝)
※割引については美術館ホームページを参照
※入場制限を行う場合あり
※会期や関連イベントは変更となる場合あり(来館前に美術館ホームページないしSNSを確認のこと)
【問い合わせ先】
町田市立国際版画美術館
TEL:042-726-2771