企画展「スペインのイメージ:版画を通じて写し伝わるすがた」が、長崎県美術館にて、2023年4月8日(土)から6月11(日)まで開催される。その後、7月4日(火)から9月3日(日)まで、東京の国立西洋美術館に巡回する。
「スペイン」という国は、異国情緒、豊かな芸術文化、あるいは多様な歴史的建造物といったイメージを人びとに共有されている。歴史的には、こうしたイメージを形成する役割を担ったのが、「版画」であった。
企画展「スペインのイメージ:版画を通じて写し伝わるすがた」は、「版画」というメディアがスペインにまつわるイメージの形成や流布にどのように寄与してきたのか、17世紀初頭から20世紀後半に至るその展開を紹介する展覧会だ。国立西洋美術館と長崎県美術館のコレクションを中心に、国内から集めた200点超の作品を通して、スペイン版画の系譜をたどってゆく。
スペインでは18世紀以後、自国の歴史や過去を再評価する動きが起こり、文学においてはミゲル・デ・セルバンテスの『ドン・キホーテ』が、絵画においてはディエゴ・ベラスケスの作品が、古典として位置付けられた。本展の序盤では、後世の芸術家がこれらの古典をどのように受容し、表現していったのかに着目し、『ドン・キホーテ』の挿絵の伝統、そしてベラスケスに基づくフランシスコ・デ・ゴヤなどによる版画を紹介する。
19世紀においてロマン主義が流行するなか、スペインを訪れるフランスやイギリスの旅行者が急激に増加すると、スペインの文化文物や風景が盛んに紹介され、エキゾティックな異国としてのイメージが定着してゆくようになった。会場では、当時の外国人がスペインのどのような側面に魅了され、表現したのかを、エドゥアール・マネなどによる版画に加えて、ポスターや写真、新聞挿絵などとともに探ってゆく。
本展の中盤では、19世紀のカタルーニャにおける美術の革新に着目。たとえば、19世紀半ばの欧米で人気を博したスペインの画家マリアーノ・フォルトゥーニは、ゴヤの影響を離れ、フランスの動向にふれつつ版画作品を手がけている。会場では、フォルトゥーニの版画の仕事を紹介するほか、19世紀末にバルセロナに集い、更なる活躍の場をパリに求めたパブロ・ピカソなどの作品にも光をあてる。
20世紀のスペインは、パブロ・ピカソやサルバトール・ダリといった巨匠を数多く輩出した。会場の終盤では、こうした美術家が自国の伝統にいかにして向き合い、乗り越えたのかを、ゴヤを起点とする2つの観点から紹介。20世紀初頭に国家的・民族的なアイデンティティの模索が活発化するなか、近代化に立ち遅れたスペインの姿にあらためて着目した動きと、1936〜39年の内戦や1936〜75年にわたるフランコ独裁という政治的困難のもとでの芸術家の活動に着目する。
企画展「スペインのイメージ:版画を通じて写し伝わるすがた」
会期:2023年4月8日(土)〜6月11(日) 会期中に一部作品の展示替えあり
[前期 4月8日(土)〜5月7日(日) / 後期 5月9日(火)〜6月11日(日)]
会場:長崎県美術館 企画展示室
住所:長崎県長崎市出島町2-1
開館時間:10:00〜20:00(入場は19:30まで)
休館日:4月10日(月)・24日(月)、5月8日(月)・22日(月)
観覧料:一般 1,200円(1,000円)、大学生・70歳以上 1,000円(800円)、高校生以下 無料
※( )内は前売および15名以上の団体割引料金
※前売券は、4月7日(金)まで、チケットぴあ(Pコード 686- 390)、ローソンチケット(Lコード 81968)、セブンチケット(セブン-イレブン)、CNプレイガイド(ファミリーマート)ほかにて発売
※身体障害者手帳などの提示者および介護者1名は5割減額
※会期中、本展観覧券でコレクション展にも入場可
■巡回情報
・国立西洋美術館
会期:2023年7月4日(火)〜9月3日(日)
住所:東京都台東区上野公園7-7
【問い合わせ先】
長崎県美術館
TEL:095-833-2110