だだっ広い会場にこつ然と姿を現したのはUFCのリングのような高い円形の金網。その中にはマヨネーズのチューブで描いたようなバスケットボールのリングが設置されている。まるで、刑務所の囚人たちのレクレーションの場のようなアウトローな雰囲気。ジバンシィ バイ リカルド ティッシ(Givenchy by Riccardo Tisci)の2014-15年秋冬コレクションのテーマが「バスケットボール」であることはもはや明白だ。
静寂を切り裂くような爆音が会場に響き渡り、ショーは幕を開けた。最初に現れたのは、黒のベルベットのチェスターコートに同素材の太めのタックパンツ、胸元の切り替えが特徴の白シャツの男。全体的にはミニマルでモードな雰囲気だが、撫で付けたヘアと頭全体を覆うネット、バスケットシューズがストリートの匂いを発散している。
コレクションのポイントは、太めのラインとバスケットコートを俯瞰したライン使い。パンツのポケット部分やセーターの上腕、スウェットシャツの胸元に配置された太さ10センチほどのラインは、シンプルな造形ながら強烈なインパクトを目に焼き付ける。
バスケットボールのコートを上から見たラインも印象的なモチーフのひとつ。スリーポイントラインを大きなポケットのように配置したパンツをはじめ、刺繍でコートを表現したMA-1、人間の骨格とコートのラインを連動させたようなシャツなど、様々なアイテムに落とし込んでいる。今シーズンを象徴するモチーフとして話題になるのは間違いないだろう。
そうした“ライン”のアプローチをより印象的に見せるのが、クラシックなテーラードのピースだ。なかでも卓抜しているのが、ピークドラペルのチェスターコート。肩周りはコンパクトで裾にかけてややフレアするシルエットは、ストリートなアイテムとの相性が抜群。ブラウンのレザー、ファー、膨らみのあるグレーのウール、水彩画風のペイントのものなどバリエーションも豊富に揃えている。太めのパンツと相性が良いスクエアヘムのジャケットも、全体を引き締める役割を果たしている。
その他にも、バスケットコートの切り替えが特徴のレザーダウン、ノースリーブの中綿コート、バスケットボールのゲームシャツをファーでアレンジしたベストなど、魅力的なピースが目白押し。色はブラック、ホワイト、グレーをベースに、ブラウン、オレンジ、カーキを挿し色に使っている。
幼い頃から親しんできたというバスケットボールをテーマに選んだリカルド。モチーフの引用は極めてシンプルだが、逆にストレートに強さが伝わってくるコレクションだった。ジュリアス・アービング並の強烈なダンクシュートは多くのファンを歓喜させるに違いない。
Text by Kaijiro Masuda(FASHION JOURNALIST)