PRADA(プラダ)の2014年秋冬は、ドイツを代表するコンテンポラリーダンサー、振付師のピナ・バウシュの1970年代の舞台からインスピレーションを受けたコレクション。シャビーシック(古めかしくてシックな雰囲気)とエレガンスが同居した独特のスタイルは、どこか隙があって内向的な印象を見るものに与える。ミウッチャ・プラダいわく「今までとは全く異なる新しい方向性で、新しい雰囲気を印象づけたコレクション」なのだという。
代表的なルックは、ボタンを一番上まで留めたレギュラーカラーのシャツとルーズなシルエットの股上が深い5ポケットパンツの上に、ジャケットかコートを羽織ったスタイル。アビエーターブルー、モーヴ(ライトパープル)、ベージュなどの中間色を組み合わせたカラーパレットはプラダならではの色彩感覚で、色が横並びの今シーズンのミラノの中では異彩を放っている。
メインアイテムのテーラードジャケットは、ラペルが広くゴージラインも低めで、多くにパイピングを施しており、70年代の雰囲気が色濃く漂う。ニットタイを首に巻いたようなスカーフもユニークなアクセントになっている。
素材はギャバジン、シルクツイル、シルクモヘア、クレープデシン、ワイルドフォックス、ナイロンなど。朴訥な素材と対照的にファーが印象的に使われており、ミュージシャン風に着こなした豪奢なファーのコート、ファーをトリミングしたフェンシングの防具のようなベスト、コート・ジャケットに合わせた丈のストールなどを提案。ファーを浮き立たせることなくスタイリングの中に完璧に馴染ませている。
ここ数年、常に世間に驚きを与えてきたシューズは、ダブルシェルのスポーティーなラバーソール、ストラップを用いたスクエアトゥの2種類を披露。2014年春夏で誰よりも早く提案した2クッションの長めのパンツ丈は今回も継続している。今シーズンは他の多くのメゾンも追随しており、やはりプラダのトレンドセッターとしての才腕に陰りは見えないようだ。
Text by Kaijiro Masuda(FASHION JOURNALIST)