日本が世界の渦に巻き込まれていく江戸末期。寺子屋で子供たちに読み書きを教えているおきくは、ある雨の日、厠(寺所有の公衆便所)のひさしの下で、雨宿りをしていた紙屑拾いの中次と、下肥買いの矢亮と出会う。武家育ちでありながら今は貧乏長屋で質素な生活を送るおきくと、古紙や糞尿を売り買いする最下層の仕事につく中次と矢亮。侘しく辛い人生を懸命に生きる三人はやがて心を通わせていくが、ある悲惨な出来事に巻き込まれたおきくは、喉を切られ、声を失ってしまう…。
映画『せかいのおきく』は、人情の機微を見つめ、数々の名作を世に送り出してきた阪本順治が自身のオリジナル脚本を映画化した新作映画。江戸末期の貧しい時代を背景に、逞しく生きる庶民の姿を通じて“人と人のぬくもり”と“いのちの巡り”を鮮烈なモノクロ映像で描き出していく“青春時代劇”だ。黒木華、寛一郎、池松壮亮が出演。