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映画『エミリア・ぺレス』監督ジャック・オーディアールにインタビュー、異色のクライム・ミュージカルを描く

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映画『エミリア・ぺレス』が、2025年3月28日(金)に全国公開へ。公開に先駆けて、監督・脚本を務めたジャック・オーディアールにインタビューを実施した。

異色のクライム・ミュージカル『エミリア・ぺレス』

映画『エミリア・ぺレス』監督ジャック・オーディアールにインタビュー、異色のクライム・ミュージカルを描く | 写真

ミュージカル映画『エミリア・ペレス』は、女性として新たに生きることを決意したメキシコ最恐の麻薬王と、彼女との出会いにより、新たな運命を切り開いていく3人の女性たちの姿を描いた作品。犯罪や贖罪をエネルギッシュな楽曲にのせて描き出す、パワフルな犯罪ミュージカルとなっている。

ジャック・オーディアール インタビュー|写真13

ファッションプレスでは、『ディーパンの闘い』でカンヌ映画祭パルムドール、『ゴールデン・リバー』でヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞したフランス映画界の名匠、ジャック・オーディアールにインタビューを実施。作中に登場したサンローランによる衣装設定や、制作背景、さらには監督の謙虚な人柄に迫った。

ジャック・オーディアールにインタビュー

ジャック・オーディアール インタビュー|写真8

『エミリア・ぺレス』ではサンローランによる煌びやかな衣装が印象的でした。衣装へのこだわりを教えてください。

※本作の制作を務めるのは、フランスのラグジュアリーブランド サンローランより誕生した映画制作部門サンローラン プロダクション。

ゾーイ・サルダナ演じたリタの真っ赤なベルベットスーツ、セレーナ・ゴメス演じたジェシーのブレザーやファーコートなど、ふたりの衣装はほぼすべてがサンローランでしたね。衣装担当のヴィルジニー・モンテルとも相談しながら、数ある衣装の中から役柄にマッチする衣装を厳選していきました。

たとえばリタは、最初は対して良い服を着ていなくて、はっきり言ってしまえばダサい。でも、ロンドンで働き出して活躍し始めると、シックなブレザーなどだんだんと品格が出てきたことがわかる。そんな、徐々に成長しているリタの姿を衣装を通して表現しました。

ジャック・オーディアール インタビュー|写真2

ジェシーに関しては、“ザ・セレブ”というゴージャスな感じ。デヴィッド・リンチの映画『ロスト・ハイウェイ』のパトリシア・アークエット演じる妻をイメージしました。

ジャック・オーディアール インタビュー|写真4

主人公のエミリア・ペレスの衣装については?

エミリアの衣装については私のこだわりもあり、メキシコの典型的な、品の良いブルジョワ女性イメージの衣装を用意してほしいと頼みました。それもなるべく色鮮やかで、カラフルなもの。

“女性になりたい”メキシコ麻薬王が持つ矛盾に満ちた心

ジャック・オーディアール インタビュー|写真0

女性になりたいと願うメキシコの麻薬王の苦悩を描きつつ、愛と憎しみ、罪と救済、友情と裏切りなどをラテンなミュージカルで表現していました。どのようなアイデアから生まれたのでしょうか?

とある小説にでてくる人物に着想を得ました。全編には登場せず、たったの1チャプターにしか出てこなかったのですが、私はこの人物に強く興味を持ちました。そこで、この人物から話を膨らませて、物語を作っていったのです。

なぜこの人物にフォーカスしたのでしょうか?

彼は薬物ディーラーとして暗躍していて、そこは最も男性優位で、最も暴力的で、家父長的な社会だった。そんな暗い世界にいながらも、彼は全く真逆の、女性になりたいという願いを持っていて…彼が持つ複雑さや矛盾というものに惹かれたのが、彼をフォーカスした理由です。

もうひとつは、代々続いてきた暴力の連鎖というものを、彼自身が性別移行することによって断ち切りたかったのではないかと考えたためです。暴力の世界から足を洗おうとするわけだけれど、それは本当に可能なのかどうか、映画を通して問いかけています。

ジャック・オーディアール インタビュー|写真10

監督が一番伝えたかったメッセージはなんなのでしょうか。

メッセージというとおこがましいのだけど…。私がこの作品を通して描きたかったのは、この世の中には行方不明者がたくさんいて、エミリアのように自由を求める人もたくさんいる。そういう人たちに対する寛容性を持ち、否定をせずに受け入れてほしい…ということでしょうか。

30年にも及ぶ監督のキャリアの中、『エミリア・ぺレス』はこれまでになかった作風かと思います。新しいことに挑戦する、そのモチベーションを教えてください。

挑戦というのは少しむずがゆいですね(笑)。おこがましいので挑戦とは言いませんが、映画を一作つくることで、今まで知らなかったことを新たに学べる、次は何を学べるのだろう、というのが1つのモチベーションになっているかなと思います。30年というキャリアの中で、自分の興味を常に更新してこれたので。逆に、この先リニューアルできないなと思った時は、映画への関心がなくなったことを意味すると思うので、そうなったらやめ時かな。

それは監督が長いキャリアの作品づくりで一貫して持っているポリシーでもあるのでしょうか?

そうですね。私の中で大切にしていることは、各作品、どの作品をとっても同じものを二度と作らない、ということです。毎回自分で作った時に、自分自身が驚き、興味をもって制作できたか?その信念を守り切れているかどうかは別として、常に心掛けていたいですね。

ジャック・オーディアール インタビュー|写真11

では最後に、映画にちなんでエミリアのように隠したい・忘れたい過去はありますか?

(笑笑)!隠したい過去というより、自分自身が隠れたいです。イギリスの精神科医ドナルド・ウィニコットも唱えているように、自分をみせる、というのは一種のカタストロフィなんです。つまり、私にとって“見せること”は苦痛で、ちょっとした破滅を意味しています。だからそうならないように、私の主張や想いなど、自分をうまく隠し通した時の喜びを、映画を通して体現しています。

自身を映画の中に隠しているのですね。

その通りです。付け加えると、今、私たちは画面越しに会話をしていますが、お互いの背景がぼやけていて、自分たちの輪郭がはっきりしていますよね。でも、私の理想は逆なんです。自分自身がぼやけていて、周囲がはっきりとした人生を送りたいのです。

【作品詳細】
映画『エミリア・ぺレス』
公開日:2025年3月28日(金)
監督・脚本:ジャック・オーディアール『君と歩く世界』『ゴールデン・リバー』『パリ13区』
出演:ゾーイ・サルダナ、カルラ・ソフィア・ガスコン、セレーナ・ゴメス、アドリアーナ・パス
制作:サンローラン プロダクション by アンソニー・ヴァカレロ
配給:ギャガ

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