コンダクター(el conductorH)は、2023-24年秋冬コレクションを2023年2月22日(水)に東京・四ツ谷で発表した。
頻繁に悪夢を見るようになったと話すデザイナーの長嶺信太郎。あえて、その“悪夢(Nightmare)”をコレクションテーマに選択している。不安を覚えるような夢や別離の夢、恐怖が迫って来る夢など、様々な夢を通じて感じた恐ろしさや悲しさ、嫌な気分は夢だけでなく現実にも存在するもの。であればむしろ、恐怖や不安をパワーに変えていきたい、という前向きな姿勢がコレクションに投映されている。
ショーの会場には、中心にベッドが1つ。人形を脇に抱え、パジャマをまとったモデルがベッドに横たわると突如、会場が暗転し“悪夢”が幕を開けた。
象徴的なのは、ピエロや死神をデザインソースに取り入れたルック。チェックのシャツにサスペンダーパンツを合わせたスタイリングや、半分ずつカラーを切り替え、左右非対称の配色に仕上げたディッキーズ(Dickies)のセットアップは、ピエロが身にまとう衣裳を連想させ、不思議な余韻を残す。また、スーベニアジャケットには九尾の狐や龍といった伝説上の生き物を刺繍であしらい、妖しく神秘的なエッセンスを加えている。
また、1年以上の構想を経て念願が叶ったという、ブラックミーンズ(BLACKMEANS)とのコラボレーションウェアも注目のアイテム。ビスを並べたバイカージャケットやジップを走らせたレザーパンツは、金属質なソリッドさが印象的だ。レザーには繊細なダメージ加工を施し、長きにわたって着込んだかのような風合いに仕上げている。
まどろんでいる時の浮遊感を思い起こさせるような、ふんわりとした佇まいのウェアも散見された。ベッド周りを彩るぬいぐるみを連想させるダルメシアン柄のファー調コートや、腰につけたしっぽのファーチャーム、ゆったりとしたチェック柄のフレアパンツなどが登場している。
緩やかなシルエットに仕上げた淡いミントグリーンのダッフルコートは、留め具のパーツにハートモチーフをあしらい、遊び心をプラス。フレアシルエットの千鳥格子柄や、ファー調のハット、グローブをコーディネートすることで、柔らかな雰囲気を演出している。
また、ライトブルーのジャージに施された、手刺繍によるきらびやかなパールの装飾や、カットソーに配された、骨の模様を描く複雑なコード刺繍といったデコラティブなディテールも、刹那的に鮮烈な印象を残す“夢”を示唆しているかのようだ。