コンダクター(el conductorH)は、2022-23年秋冬コレクションを、東京・品川のクラブeXにて、2022年3月15日(火)に発表した。尚、今季より初のウィメンズラインも披露された。
今季は、憎悪や妬みといった負の感情に光を当てる。愛情ゆえに憎しみに様変わりしてしまうような、表裏一体の危うさや、相反する念いの間で揺れる葛藤と悲しみなど、美しくもおぞましい感情の二面性を、服を通して描き出した。
会場内を見渡すと、ぐるりと客席が周りを取り囲む中心に円形の舞台があり、天井には大きな風船が飾られている。連なるバルーンが見世物小屋のような雰囲気を演出しつつも、その他には舞台があるのみで装飾はない。
暗転しショーが幕を開けると次々と風船が割れ、ハート型の紙吹雪が大量に空を舞う。床に散らばる紙吹雪が舞台やランウェイをまばらに赤く染め、絞った照明の中をモデルが歩く様子は、演劇的な華やかさもありつつ、どこか退廃的で寂しさも帯びていた。
目を引いたのは、エッジの効いた硬質なディテールと、対照的な柔らかさを共存させたルック。
たとえば、シースルーのしなやかなブルゾンにはファスナーやベルトなど、金属質のパーツをあしらってソリッドさを持たせつつ、クラシカルなタータンチェックのプリーツスカートをコーディネート。コンダクターの得意とする、華やかなミックスツイードのセットアップにもベルトをあしらい、ボンデージ仕様に仕上げた。アナーキーなムードを軸としていながらも、どことなく繊細さやしなやかさを漂わせているのが印象的だ。
加えて、"二面性"を直接的に彷彿させるのは、縦半分で柄や色を切り替えたアウターだ。ダイナミックな分量感のフェイクファーコートは、猛々しさを連想させるタイガーモチーフと、深みのあるブラックを大胆に切り替え、存在感のある佇まいに。赤と黒のカラーブロックを施したブルゾンは、肩に施されたホワイトのパイピングがアクセントを効かせている。
また、装飾的なエッセンスも散見された。ショルダーを強調したウールテーラードジャケットとブーツカットパンツのセットアップには、サイドラインに沿って星型のスタッズをオン。ボウタイシャツやシャツドレスには、有刺鉄線や般若、そして鏡像をモチーフにしたバロック調のグラフィックを総柄でプリント。一見すると華やかに見える模様だが、絵柄をよく見ていくと棘が至る所にあり、また深淵を覗き込むような仄暗さも携えている。