企画展「ヒルマ・アフ・クリント展」が、東京国立近代美術館にて、2025年3月4日(火)から6月15日(日)まで開催される。
20世紀初頭、ワシリー・カンディンスキーやピエト・モンドリアンといった同時代の美術家に先駆けて、抽象絵画を生みだした画家、ヒルマ・アフ・クリント。企画展「ヒルマ・アフ・クリント展」は、すべて初来日となる作品約140点を通して、抽象絵画の先駆者アフ・クリントの画業を紹介する、アジア初の大回顧展だ。
1862年、スウェーデンのストックホルムで生まれたアフ・クリントは、正統な美術教育を受けたのち、主に肖像画や風景画を手がける職業画家としてキャリアをスタート。その一方、神秘主義的な思想にも傾倒し、瞑想や降霊術の体験を通して、アカデミックな絵画とは一線を画する抽象絵画を生みだしてゆくことになる。
アフ・クリントは1896年、4人の親しい女性と降霊術のグループ「5人(De Fem)」を結成し、1908年頃まで活動したようだ。ここでは、降霊術におけるトランス状態のなか、高次の霊的な存在からメッセージを受け取り、自動書記や自動描画によって記録している。そこに描かれたのは、波線の連なり、植物、細胞、あるいは天体など。こうした体験を通してアフ・クリントは、自然の写実的な描写に基づく従来の絵画から離れて、斬新な表現を育んでいったのだ。
こうして1906〜15年にかけて手がけられたのが、「神殿のための絵画」と呼ばれる、全193点の抽象絵画だ。円や四角形といった幾何学的図形、花びらや蔓などの植物に由来するモチーフ、細胞や天体を思わせる形態など、さまざまな要素からなるこれら一連の作品は、自ら構想した神殿を飾るためのものであったという。その後、アフ・クリントは1944年にこの世を去るまで制作を続けるも、残された作品はほとんど展示されることがなく、21世紀に入って再評価されるようになったのであった。
本展では、アフ・クリントを代表する作品群「神殿のための絵画」を中心に、初期から晩年までの作品を紹介。なかでも《10の最大物》は、人生の4つの段階、幼年期、青年期、成人期、そして老年期を描いた絵画10点から構成される大作だ。高さ3mを超えるこれらの巨大な作品を、一挙に体感することができる。
また、ノートやスケッチといった資料も。美術教育を受けていた頃に制作されたと思われる精緻なスケッチや、降霊術を体験するなかで記録されたドローイングなどに加えて、「神殿のための絵画」を制作して15年以上経たのち、これらの作品群を収めるための建築物の構想を練ったノートなども目にすることができる。
企画展「ヒルマ・アフ・クリント展」
会期:2025年3月4日(火)〜6月15日(日)
会場:東京国立近代美術館 1F 企画展ギャラリー
住所:東京都千代田区北の丸公園3-1
開館時間:10:00〜17:00(金・土曜日は20:00閉館)
※入館はいずれも閉館30分前まで
休館日:月曜日(3月31日(月)、5月5日(月・祝)は開館)、5月7日(水)
※観覧料については追って告知
【問い合わせ先】
ハローダイヤル
TEL:050-5541-8600