コンダクター(el conductorH)は、2022年春夏コレクションを2021年9月2日(木)に渋谷の劇場・ユーロライブにて発表した。
今季のコンダクターは、コレクション発表にあたり短編映画『something in the air』を製作。監督・脚本には、『とんかつDJアゲ太郎』にて監督補を務めた小林達夫を迎えた。
デザイナーの長嶺信太郎は、オンラインでコレクション発表を行う機会が増える中で、デジタルとフィジカルを融合させた新たな発表形式を模索していたという。オンライン上で見ても新鮮に目に映り、なおかつ発表会場に足を運んだ人にも特別感のある体験を提供できることから、今回“映画上映”による発表形式を採用した。
短編映画『something in the air』では、あるバンドを中心に、バンドメンバーやそのバンドを取材する編集者が自身の表現と向き合う姿が描かれる。時代設定がはっきりとわかる演出はないものの、現代的な物語であるように思える一方で、小道具にはカセットレコーダーが使われていたり、昔の電話機が使われていたりする。時の流れと記憶、その時々の感情を俯瞰でなぞっていくような物語が展開された。メインキャストとして、唐田えりか、吉村界人といった俳優が起用されている。
『something in the air』の作中で登場人物たちが着ているのが、コンダクターの2022年春夏コレクションのウェアだ。物語と同様に、フレッシュさや現代性を感じる一方でどこか懐かしくも思える、余韻を残すような佇まいが印象的。
デザインのインスピレーションは、1960年代後期のサイケデリックなムーブメントと、デザイナー・長嶺が最も強く影響を受けた2000年代前半のモードスタイル、そして2020年代以降の現在進行形のストリートの空気感から得ている。それぞれの要素を細かく分解し、組み直していくようにしてコンテンポラリーとノスタルジーを織り交ぜた。
ヴァージン・ウールスーツには、あえて不均一にペンキを飛ばすことでアクセントをプラス。華やかなミックスツイード地で仕立てたナポレオンジャケットにはシルバーのロープパイピングをあしらい、ゆったりとしたシルエットのライダースジャケットにはマットな質感の素材を採用している。
また、スカルやクロスモチーフのプリントを施したボウタイブラウスには、透け感のあるレーヨンジョーゼットを用いることで繊細な雰囲気を加えた。典型的なアイテムに、意外性のあるディテールを施していくことで、時代性やテイストをミックスさせ、独特な雰囲気を醸成している。
また、ポップなロゴTシャツやスカジャン、ベロアのセットアップ、タイダイのフーディーなど、レトロな雰囲気のアイテムはコーディネートによって現代的な雰囲気に。例えばタイダイのフーディーにはレザーのオールインワンを合わせ、スカジャンにはウエスタンブーツを合わせるなど、新鮮さのある組み合わせが見て取れた。