エムエム6 メゾン マルジェラ(MM6 Maison Margiela)の2023年秋冬コレクションが発表された。
優美な屍骸──シュルレアリスムにおける作品の共同制作の手法のひとつとして知られる「カダーヴル・エクスキ(Cadavre exquis)」。複数の人びとが、互いにほかの人がどのようなものを制作しているのかを知らぬまま、自らの部分だけを手がけるこの手法からは、個々の制作者が予測しえない作品が生まれることになる。
たとえば「優美な」と「屍骸」という言葉は、通常のコンテクストでは共存しないだろうシンタックスの下に置かれることで、異化作用を示すことになる。そして今季のエムエム6 メゾン マルジェラの基底にあるのは、この「優美な屍骸」的な手法によって、衣服に異化作用をもたらすことだという。
たとえばテーラードジャケットは、ウールを基調としつつ、フロントに箔押し加工を施すことで、クラシックとインダストリアルを交錯。シャツはスリーブをレザーで切り替えて、軽快さと重厚さを隣接。あるいはウォッシュドデニムのシャツやパンツは、フロントにブラックを、バックにインディゴを用い、前後で表情の違いを演出している。
こうした異化作用は、ウェアのテイストばかりでなく、構造自体にも取り入れられている。ロング丈のチェスターコートは、シングブレストジャケットとロングジレのレイヤードによって構成。また、レザーのジレには、パディング素材のハイキングベストとテーラード仕様のジレを重ね、それぞれの表情の差異を際立てている。